ある事件。

奈良の少年放火事件の調書漏出で、「秘密漏示罪」では最高刑に当たる懲役6ヶ月が求刑された。
「僕はパパを殺すことに決めた」を、不本意ながら読んでみて、私は今も警察は調書を丸写しにした自称「ジャーナリスト」の草薙氏を「盗作」で
訴えるべきだったのではないか、と思っているが、残念ながら、情報を提供した崎浜医師にやや怒りを覚えてもいる。
そもそも、何故、人の心理を理解し、診断するプロフェッショナルが、こんなにも簡単に草薙氏に騙されてしまったのか、
「子供」が「専門」だから「成人」の心理までは見抜けたかったものか、常識的な行動として、人の紹介があったからと言って
簡単に人の一生を左右するような情報を無条件に見せてしまったことには疑問を抱かざるを得ない。
新聞記事で、それぞれの主張をチェックしてみたが、どうもお互いを別方向で責めているようで、本質的な問題の指摘に至っていないのではないか、
この事件での最大の被害者は、衝動で家に火をつけてしまい、大切な家族を間違って焼死させてしまった少年だ。
事件の興奮、まださめやらぬ状態で、話した内容を全て晒されてしまい、
今度はたった一人の父親すらも窮地に追い詰めてしまったと理解できるだろう聡明な少年は、今何を思っているのだろうか。
本、と言うか、調書丸写し本を読む限り、父親が少年にしたことは酷いとしか思いようがない。
しかし、これはまだあの当時一方的な情報でしかなかった。未成年の「主観」でのみ語られていることが、本当に真実に全てであるかどうか、
少なくとも、事件の当時、息子と共に罪を負っていくと父親は発言していたのだから、その愛情の示し方に多少の間違いがあったにせよ、
父親は息子を大切に思っている、と私は受け止めている。
少年の更生のためには、まず父親にその関係を見直させなければならないだろう。
どれほど酷い親であってもいつか許せる日が来るのを信じさせることが、期せずしてなした「家族殺し」の罪と共に
この先、生きていかねばならない少年にとって必要なのではないか。
それを見通すこと無しに、何故、崎山医師は少年の情報をあっさりと漏出させてしまったのか。
私は崎浜医師が少年の父親を単純に「断罪」したのだと思っている。父親が社会的に罰せられることを望んだのではなかったか。
あの本を読んだかぎり、確かに父親の子供への教育熱心は異常と思えるレベルだ、
しかし、ある種の職業を代々受け継ぐ、受け継がせようとする家庭では、このような極端な行為が意外にも多く見られるように私は思う。
わかりやすいところで言えば、歌舞伎の世界など、親が子に対して相当厳しい。その厳しさに少年の父親の教育指導は似ていると見えなくもない。
それが正しいとはもちろん私は思わない。しかし、その関係が「犯罪」であるかどうかは、私ならばその判断を司法にゆだねる。
決して、鑑定医が罪を問うべきものではないはずだ。
「子供をかばう」つもりが結果的に子供を追い詰める、
うまく草薙氏に騙されたにせよ、崎浜医師はありとあらゆる可能性を考慮しておくべきではなかったか、
医師として、もっと慎重であるべきではなかったか、私は崎浜医師が鑑定医として当たってしまった少年のさらなる不運を悲しく思う。
彼が鑑定医でさえなければ、このように将来にわたって更に苦しむ火種は抱え込まずにすんだ。
少年に対しては、崎浜医師は、その父親同様「加害者」である、彼を苦しめる存在でしかない。
このようなことを引き起こしても未だ「ジャーナリスト」を自称する草薙氏など、論外だ、私は2度と彼女が何も書かないことを心から望む。
何とも重い話題なのでまとまらないが、とりあえず、覚え書きとして残す。
事件の判決は4月15日、今後も注目しておこうと思う。