読書感想 黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実(その1)

四谷大塚の元講師・森崇翔が教え子を盗撮してその子の画像・住所を

ネットのロリコングループにさらした事件で逮捕された時の写真が

顔を隠したものだったのではてなブコメ

「他人のプライバシーを平気でさらした奴が自分の顔は隠すのか」とあって

先日読んだ「黒い迷宮」の中でも織原城二受刑者が盗撮で捕まった時も

裁判の折も、徹底的に自分の顔を記録されないようにしたのを思い出した。

普通、警察に逮捕されたらあきらめてしぶしぶ顔写真を撮らせそうなものだが

この織原は徹底抗戦、その後、ブラックマン事件の裁判でも

記録者からできる限り顔を背けていたとの話には

恐ろしくゆがんだナルシシズムが感じられてうすら寒い。

ネットフリックスのルーシーブラックマン事件のドキュメンタリーを見たので

「ザ・タイムズ」東京支局長リチャード・ロイド・バリー氏の「黒い迷宮」を読んで

ブラックマン事件を最初から最後まで追い続けた日本在住歴の長いバリー氏ですら

この大阪出身・元金聖鐘・改名して織原城二の経歴はほとんどわからないのに驚いた。

それでも兄弟が4人いること、高校から慶応に行ったものの当時の同級生の証言が

ほとんどとれないこと、

ただ一人、織原から同級生に卒業アルバムを貸してくれと頼まれ貸した人間は

返されたときにそのアルバムから織原の写真が切り抜かれていたことが記述され

無数に存在した睡眠薬強姦の映像の中でも強姦する際

織原自身は仮面をつけていたなどその行動の異常さがうかがい知れて

性犯罪加害者とは自分に相当な期待のある人間ではないか、

ごく一般的な人間は自分の容姿への過剰な期待は思春期過ぎればあきらめがつく。

織原の異常なまでに自分の正確な容姿の描写を避けるさまは

いまだ自分自身の容貌に「夢」があるとしか思えない。

正確で容赦のない他人の目に映る自分自身を直視することができないのではないか、と

高校時代に周囲に言い訳しつつ目の手術を受けていた事実からも推察できる気がする。

バリー氏はあまりにも得体のしれない性犯罪加害者の織原にできるだけ取材を行い、

最終的には嫌がらせの名誉棄損訴訟まで行われて、会社の裁判費用の肩代わりの返礼に

この「黒い迷宮」が書かれた気がしないでもない。

英国マスメディアの徹底取材ですら、織原の素顔が暴けないのだから恐ろしい。

しかし、「金があっても無能力」をここまで露わにした事件はないのではないか、

性犯罪者のテンプレートみたいなものがここに詰まっている気が私にはする。

相手の意向を全く無視して薬を使うのに容赦がない。

意識のない女性に加える蹂躙を几帳面に記録し続ける。

まことにこんなに「くそ」と思う加害者はいない。詐欺や殺人のほうが理解できる。

「友達百人出来るかな」のノリで弁護士100人集めたとされる金満ぶりには

腹が立つのを通り越してあきれ果てる。金でここまで腐ったことができるとは!

「黒い迷宮」の中ではこの裁判劇にかかわった弁護士の実名も書かれ

なぜか新宿に事務所がある弁護士たちが連なる。

その中には「慶応卒」の弁護士の氏名も含まれ、

年齢的に織原の高校時代の知り合いである可能性もあったりして感慨深い。

本の中でバリー氏とよくやりとりをしたらしい、日比谷高校卒で内田樹氏の同期、

塩野安夫弁護士は「黒い迷宮」が日本で翻訳された2015年に

65歳で逝去されている。

ちなみに現在も「弁護士〇ットコム」だの「冤罪事件!」だので名前が出る

某弁護士も織原事件の弁護団の一人であったようで、

つい「黒い」笑いが洩れるアテクシであった、、、(続く)