読書メモ。「1793 1794 1795 ニクラス・ナット・オ・ダーク」

ヘレンハルメ美穂氏翻訳、スウェーデン歴史ミステリ。

「誰得?」な欝な作品で猟奇、狂気、凄惨、残忍を思う存分書きたいがためだけに

「歴史もの!」の体をとったのでは?と疑わせる、私には合わない内容。

「大スウェーデン!」と一般日本人にはなじみのないロシアとさんざんやりあっていた

頃はフランス革命、王家一族が斬首される時代の話ではあるものの、

ここまで残酷な描写を事細かく書かなくても、

作者は昨年亡くなった佐川氏がフランスで起こした事件などが好物なのではないか、

なんて思ってしまった。

一見、人間性という正義の話ではあるものの、残念ながら正義は役に立たない。

まあ、いつの時代も「正義」なんてものが、くその役にでも立ったことはないんだが

それでもこの作者は何を考えているんだろう?となるほど胸糞展開で

読み終えたところで何のカタルシスも得られない。

それでも第1作目の構成はそこそこよくできていて、

これを無理に3部作にしなくても、この1作目だけで終わっていれば評価も高かろうが

2作3作は前編、後編構成になっているものの、

ただだらだらと、猟奇的な集団がやりたい放題を金の力でやりまくっている、

その上で特におとがめなし、みたいな話、今の時代に読みたいか?って、

マイダーリンが「話題になってる!」で勧めてきたんだけど。

セックスと暴力を思う存分味わいたいなら良いのかもしれないが、

セックスと暴力を肯定する感覚の持ち主はほぼ男性にしかいないからな。

常にセックスがらみの暴力を振るわれる側である女性が好むことはないんじゃないか、

と言って、セックスがらみの暴力を好んだ女、というのもこの中には出てくる。

が、その暴力を男側にふるったところもっと強烈な暴力で死ぬよりつらい状態の拷問に

かけられるわけなので、この作者はよほど女に恨みでもあるのか、

「ナット・オ・ダーク」とは「夜と昼」のような珍しい本名で

スウェーデン最古の貴族のお家柄らしい。私は近づきませんな、こんなやつ。

出てくる人物ほぼ誰も幸せにならない、手足を切り落としたり、

新婚初夜に集団凌辱のあとで肉体の跡形もないほど殴り殺されるような花嫁の話

が大好きなのであればどうぞ、って感じ。

作者がフランス革命時代のスウェーデンを舞台に選んだのは

この手の狂気がかの大革命で山のように積み上げられた、

それが「当たり前」だった、のような「言い訳」のためだろうと透けて見えて、

それでこうも残忍さをむき出しにされるのは私はあまり意味はないと考える。

特に2作目3作目では。

読むなら、ギリ1作目だけ、それ以降はまともなミステリ読みで

穏当な感覚の持ち主なら、読む価値なし!

星は1作目だけ、4つ。2・3作は星は無し。ミステリの出来も悪い。

そうそう、スウェーデンはこの時代から「コーヒー」を庶民でも愛飲していたようで

それだけかな、知って面白かったことって。

往年の「ネスレ」の広告「ストックホルムの朝はコーヒーで始まる~云々」は

あながち何の文化的背景がないわけではなかったんだ、と思った。

私にはその程度の面白さ。私は集団暴力は表現世界でも好まない。おわり。