沁みる。
久々に西原理恵子でほろっと来る。
ほぼ同世代の現実が穏やかに描かれている。
マイダーリンが買うのをやめてしまった「ダーリンは〇〇才」では
最後に読んだ巻でえらく荒れた感じであったがこの本では柔らかい。
扱うネタが日常だからか。
さすがにいまだ現役で働く夫を持つアテクシはまだ夕食を作っているが
夫もいない、子供も独立した50代後半女性はもうご飯は作らない。
西原さんは自由に生きていられるようだ。
しかしまだ「こっからっす」なんだよね、
「ここからが長い」と西原さんが書かれているように、
なんだかんだで女の人生の戦いはまだ続く。
私の周囲を見回しても、子供を全員結婚させ、孫が出来たら手伝いに行き、
親を見送ってと、昔、氏家幹人先生が書かれた江戸時代エッセイに
「おばあさんは忙しい」のタイトルで
江戸時代の文書におばあさまがやれどこの嫁の産後のひだちが悪いの、
子供がむずがるのと、あちらこちらに呼び出されてお手伝いに行く記録があった。
隠居したその夫はどこにもいかず、どこにも呼ばれず、家にいる。
これが女の一生の現実だな、と思ったものだ。江戸時代から変わりがない。
コマコマした家事の面倒を見るのはずっとやってきた人間だけで、
それをできる限り続ける、でも体力にも限界があるよなあ、と
「りえさん手帳」でもその自覚をつらつらと描いている。切ない。
全然キラキラしてない、おまけに「コロナ」もやってきて、の中高年ライフ、
時折しんみりしたネタを挟みつつ、くすっと笑える話もあったり、
やはり西原ワールドは素晴らしい。
子育てが終わった勢、犬猫をめちゃくちゃ愛でるようになるのも、あるあるか。
私も最近、犬猫の動画をつい見入って時間を溶かす。
こんなくたびれた体になりながら、まだ人生は続く、それが良いのか悪いのか、
よくわからないが、私の予定では今後娘たちの結婚、出産、育児、仕事の両立を
遠方にいながら主婦出張を重ねて娘たちの人生をそれなりに仕上げてやる努力を
重ねていこうかと、老いた体をだましだまし、やっていこうかね。
この作品、子育てが終わった中高年の現実をこまやかに描く、
私世代にはお勧めの作品。年末に、ぜひ。