予防接種の思い出。

下の娘が中学生時代、部活の同級生母親に「予防接種反対派」が二人いて

一人は最初のお子さんが突然死したのは受けた予防接種のせいだと信じ込んで、

その事情をよく知る幼馴染とともに同級生で生まれた娘たちに

生まれてから一度も予防接種を受けさせてこなかった。

部活内で機会があれば予防接種反対をあちこちに仕掛けたようだが、

私は上の娘の代から引き続き部活の保護者会の世話役で

うるさそうに見られていたのか、その情報は届いていなかった。

部活サポートのときに顔を合わせるその二人と2年、良好な関係だった。

娘がその二人のお子さんとそろって中3になったある日、

「○○ちゃんに、今まで一度も予防接種受けたことない、って相談された」

 「衛生看護学科に受験するのに、予防接種を受けないといけないんだって」

「でもお母さんに「絶対、予防接種は受けさせない!」って言われたって」

と聞かされ、驚愕。

それはたいへん!と、相談してきた子と娘とはクラスが違って、

上の娘の時から知っている信頼できる先生がその子の担任だったので

相談してみるように話し、しばらくして、そのお母さんから私は

「○○さんは予防接種、お子さんに全部してる?」とたずねられ、

「うちは皆勤賞」と答えて、黙り込まれ、

結論から言うと、どうしても衛生看護学科に受験したいその子が

先生とともに母親を説得し、校医に相談して中3の1年間に

出来る限りうけられる予防接種を順次受けていくことになった。

そのことで幼馴染だった二人の母親間で悶着があったようだが、

最初に言い出したお友達が予防接種を受けてもぴんぴんしているのを見た

もう一人が「私も受けたい、○○ちゃんと同じ高校に行って看護師になりたい」

と言い出し、また先生が走り回って予防接種を受けさせる、

しかしこちらはかなりお母さんの説得が大変だったようで、

私はこのお母さんに1年間、部活で顔を合わせると

恨みのこもった視線を送り続けられ、完全無視を決め込まれた。

ただお子さんの意志が強く「死んでもいいから受ける!」とがんばったので、

無事、二人とも必要な予防接種を受け、衛生看護科にも進学できた。

娘が中学卒業の時に、予防接種を受けさせるため奔走した先生に声をかけられ

「(娘の名前)さんのおかげで二人も将来が明るくなった生徒が出来ました。」

「相談した相手が(娘の名前)さんでよかった、こちらにつなげてくれたから」

とお礼を言われ、むしろこちらの頭が下がった。

ただでさえ大変な受験生のクラス担任でその上こんな仕事までした、

こんな素晴らしい先生が田舎にもいるので、日本の教育界は侮れない。

現在、衛生看護学科を卒業した二人は無事、准看護師になり、

一人はがんばって正看護師になったそう。

衛生看護科から正看護師になるのは難しいのですごい。

予防接種の話題が出ると、時々、二人のお子さんを思い出す。

意志が強かったお子さんと、お子さんのために意志を曲げたお母さんと、

親子で立派だった、と今も思う。予防接種は無料ではなかったはずだ。

地元中学に行かせていると、時々こんな出来事にも出会う。

倍ほど、トンデモなこともあるが。

校医の先生が1年間で出来るだけ受けられる予防接種カリキュラムを組んで

地元の開業医の先生につなげてくれたのも良かった。

日本の医療も教育も捨てたもんじゃない、と私は思う。

それから人は変わる、成長する、子供が親を変える事もある。

人間は基本的に良い生き物だと思う。おわり。