訃報。

中村哲医師、テロに倒れる。

この10年くらいの訃報の中で私にとって最も悲しい知らせだ。

中村医師を知ったのは30年くらい前、私がまだ20代、結婚前で

おそらくは「暮らしの手帳」か「婦人の友」の記事だったように思う。

最近も時々「婦人の友」に中村医師は文章を載せていた。

彼の文章は医師らしく明晰でわかりやすい。

その活動よりは文章にひかれた気がする。

長年、このような偉業をされてきておそらくは聖人化されるかもしれないが、

偉人ではあっても聖人ではないのが私には、良い。

真っ当に怒る人であった。忖度なんかとはかかわりなく。

一時期、フェミニストと揉めたと聞いて何があったかと調べると、

その怒りは真っ当、水だ、食料だ、という場所にわざわざ来て

「女性への抑圧がぁー!」とやられたら、きれるのは当たり前だろう。

はてなでは有名なフェミニズム研究家(?)が訃報のニュースに

ブックマークしているのを見て、この件を知っている私は苦笑い。

星は何も知らない人間がつけているのか、あるいは知っていてつけるか、

昔も最近も、フェミニズムとは売名行為に用いられる気の毒な思想だとしみじみ。

中村医師はフェアな人間でフェミニズムよりも先にするべきことを優先する、

それが出来る人だった。

彼が今の「アンチフェミ」の言い訳に使われないことを心から望む。

出来ることを出来るだけやってきて、それでも凶弾に倒れる。

殉職であるのは間違いないが、

確実に彼を殺す準備をしている集団がいたのは何故なのか。

周囲の人間も全員が死んでいるとは、容赦なく全員を殺す、

その指示は誰が、どこからしたのか、解明すべきことだろうが、どうなるか。

世の中にはまともに水も飲めないような状況に人間を追い込んで

自暴自棄の兵士として使いたがる集団がいるのだろう。

彼が自分で「土木業をしている」と言ってまで続けていた灌漑事業は

この先どうなるのか、せめて彼の作ったものは残して欲しい。

彼の遺体は向こうで荼毘にふされるのか、あるいは日本まで帰ってこられるか、

願わくば彼の流した血がしみこんだその土地がいつか豊かになるように。

本当に、悲しい。ご家族の痛みを思うと、本当に悲しい。