読書感想。シムノン・メグレ

フランスの選挙はEU残留派が勝利したようで、案外英国が離脱したから英国と同じは嫌、でマクロン氏が勝ったのかも。
「どちらがより嫌われていないか」の選挙だったとは、どこの国でもそうなんですなあ、、(涙)
「どちらもアレ」だが「まだマシ」なほうを選ぶとは苦渋の選択。うう、辛い。
フランスEU残留記念と言うことで(?)連休中に読んだシムノンのメモなど。
先日ミステリチャンネルで見た「ミスター・ビーン」のローワン・アトキンソン主演の「メグレ警視」、
美しい映像で力作であろうことは理解できたものの、原作を読んでいないのでその世界観がわからなかった。
今回、まず新装版の「紺碧海岸のメグレ」からはじめて「メグレ、たてつく」「メグレと幽霊」を読んでみた。
解説にはメグレは1930年代、大戦と大戦の合間に活躍し始めたようで、
その後長らくシリーズは続くがシリーズものの主人公の常として年齢設定はあまり動かないようだ。常に「ほぼ50代半ば」。
しかし、時代は第2次大戦後1960年代ごろまで動くようで、メグレは1800年代終わりごろ生まれの設定なので、整合性はない。
ま、私の好きなP.Dジェイムズのアダム・ダルグリッシュだって最初は戦争参加者だったのに、最終的には携帯電話を使うし、
人気シリーズとはこんなものか、それにしても長生きな主人公だ。
中篇である3作を読んだ感想は「ミステリではないな」で、
「ペニー・ドレッドフル」ではないにしろ基本は大衆小説、オー・ヘンリとかアーウィン・ショウのような軽い読み物だった。
私は読んだことがないがひょっとして「鬼平犯科帳」とはこんな感じの小説なのか、少なくとも読者は謎解きは出来ない。
ストーリーテリングの妙味ではまるのはわかる気がする。私は気に入った。
フランスの風俗が描かれていると聞いたものの、今のところ知ったのはメグレは警察官のくせによく酒を飲むと言うことか。
昔のパリでは飲み屋で電話をかけるのにコインを借りるとか、知ってどうなる?的な豆知識程度かな。
なぜ、これを今英国でドラマ化するのかよくわからないが、気楽な小説なので現在のハードな世界に少しの息抜きをってことなのか。
一般庶民にとってはわけのわからない現代社会だからねえ。
ふと、最近の「貧困問題!」に関して、「弱者!」と言われても肝心の名指された弱者がぴんと来ないのは、
彼らが名指す「弱者」とは「庶民」であるからではないか。
先日「弱者のくせに連帯しない!」と奇妙な批判文を読んで思ったのは
彼女が弱者と名指しているのが実のところ弱者ではなく「庶民=一般大衆」ではないか、
彼女のような「自称・弱者」で実は恵まれた人間からみれば、
さほど豊かではない生活をしている庶民は弱者に思えるかもしれないが、「庶民=弱者」ではない。
「庶民」は海外の高級レストランで舌鼓を打つような生活をしていないかもしれないが、
十分満足して幸せな人間も多いので「連帯しろ!」と言われてもぴんと来ないだろう。
それが見えない自称底辺出身高学歴弱者の煽り文にブコメが多くつく現象を私は不思議に思っている。
この「謎解き」が私には面白いので、ネットはまだまだ楽しい。
シムノンのようなたたき上げの人間が描く庶民像が世代、国を超えて私には好ましく感じられる。
底辺からたたき上げるとは、決して自身を弱者であるとは考えない強い明るさを身につけることで
それをネットの自称・底辺から這い上がってきた人間から感じたことはないな。
「庶民」を無理やり「弱者」にして連帯を叫ぶ人間にはろくなのがいないのはおそらく世代、国を超えて確かだろう。
むやみやたらに煽る連中には気をつけろ、とここに。