ほんの感想・「お嬢様ことば速修講座」

「ねほぱほ」の「ハイスペ婚の女」に感心した理由のひとつが彼女の涙ぐましい努力にあると書いたが、
その努力の中に、私が今まで思いつきもしなかった「自己啓発系」本(?)を熟読する、
具体的に言えば「お嬢様らしく見えるマナー講座本を100冊以上読む」があって、
テレビ画面でも紹介されていた「お嬢様らしい言葉遣い」に私はいたく感動し、自分にはそういう「勉強」がたりなかったと反省した。
ふと気がつけば、婉曲な物言いをする人々に囲まれ、ハテ、私は今何を言われたんだろう?と察しもつかない場面に出くわすことが度々。
「ハイスペ婚の女」で紹介された「お嬢様言葉速修講座」にあった「お嬢様らしいけなしことば」で腑に落ちるものがたくさんあったりして、
たとえば「無礼な人」は「はっきりしてらして」とか「うるさい人」は「いつもお元気そうで」、「趣味が悪い」は「個性的な装いをなさる方で」などなど、
あらー微妙に、ディすられてることがあったわね(微妙か?)こりゃー、どうも失礼しました、と、
私は売られた喧嘩はだいたい買うほうなんだが、売られてるのにも気がつかなかったわ、ってな失態をやっちまってきたな、
で、遅ればせながら、どのように失態を晒してきたか、反省するためにその本を借りて読んでみた。
私の借りた本は「お嬢様ことば速修講座・新装版」で加藤ゑみ子さん監修・ディスカヴァー・トゥエンティワンの2000年第1刷版で
監修者の本職はインテリアデザイナーらしい。
ネットで調べたところによると、「お嬢様らしく見える」に関する著作が山ほどある割に経歴が詳しくなかったりして、どうにも謎の人。
面白いので、そのうち調べよう。
本の内容は、最後の「お嬢様らしいけなしことば」がもっとも秀逸で、
後の具体例は微妙なものが多くて、20年近く前に書かれたものだから仕方がないか、と思いつつ、
私がうならされたのが、編集部の前書きと、「実践の心得」の最終部分、
「最後に、ここで学びましたことをお照れにならずに自信を持ってお使いになりますよう。
最初の三、四か条を実践なさるだけで、たいていの方は「お嬢様らしい」とか「礼儀正しい方」とお思いになります。
お里が知れる危険性は八割方ございません。と申しますのも、お相手の方も本当のお嬢様ではないからでございます。
ほとんどの方が、あなた様と五十歩百歩、お嬢様を装っていらっしゃるだけでございましょう。」
と、わぁお、こんな、最後の最後で読者に毒づくすごい本、うまれてはじめて読んだぜ!
ようは、最後に「こんな本を読んでいるあんたは、こんな言葉遣いしなきゃいけないような階層にいないだろ」ってな、
まことにみもふたもない「真実」を突きつけているわけで、私はここ数年読んだ本の中で一番感動したかもしれん。
ここで、最初の前書きに編集部が
「本書は「ブティックやレストランで大きな顔をしたい」と言う、担当編集者の単純かつ不純な動機から生まれたものである」の意味が
実によく効いてくる。
うわー、自己啓発本がこんな見事な「ちゃぶ台返し」をするものだとしたらどんどん読んでみたい!と思ってしまった。
読者への強烈な毒がこの本を真面目に読んだ側にどれほど伝わっているものか、
アマゾンの書評を読んだところ、さすがアマゾン読者はすごい、完全に「面白・トンデモ本」のジャンルに入れてるっぽい。
ま、まともなマナーを学びたければ、やはりマナー専門の講師が書いた本を読むほうが良いな、
でもこれが楽しい「トンデモ本」とわかるかどうかが、「踏み絵」だな、と思ったのでした。
これもまた、男性が読んでどう思うか、感想が聞きたい本のひとつだ。