夏の読書案内(その5)

とりあえず「夏の」は「その5」で終わらせようかと。
日本の小説で印象に残っているものを考えると加賀乙彦の「宣告」がすぐ出てくるが、
これは私の個人的な記憶と絡んでいるので他人にお勧めするものではないかも。
本を人に薦めるとなると、どういう人に読んでほしいかをまず考えないといけないので難しいものだな。
「日本人が書いたもの」と限定すると私が好んで読んできたものは大体理系教育を受けてきた人の本が多いのがこのたびわかった。
北杜夫加賀乙彦は医学部出身者、高校時代繰り返し読んだ立原道造東京大学工学部、今でも気がつくと理系教育を受けた人間の書くものをよく読んでいる。
ずぶずぶ文系過ぎるからなのかね。
日本の小説で私が不特定人物におすすめできるとしたら、三島由紀夫の「春の雪」くらいか。
豊饒の海」4部作でもっとも「まとも」といえる作品で、こういう「ド耽美」はとりあえず抑えておいたほうがいいような、
平成になってから、妻夫木聡竹内結子で映像化されたが、はたして出来はいかがなるものであったか、未見なのでなんとも。
豊饒の海」シリーズはあとになればなるほど、「大丈夫か!公威(三島由紀夫の本名)!!」と言いたくなるほどおかしくなってくる。
なんせ、割腹自殺してしまった人だからねえ、、
この人は中年期から何故か「肉体改造!」と筋トレに励みまくったりしているので、今はやりの「筋トレ」は「正義!」ではないのかも。
三島由紀夫は「仮面の告白」が有名どころだが、私はあまり好きではない。
どちらかと言えば「宴のあと」だとか、この人は俗っぽい題材を扱ったほうが光る人だった気がする。これは私の好みか。
三島作品で私が一番好きなのは「音楽」で、これも俗っぽさ極まりない作品ではあるものの結末がこの人にしては明るい。
直球・ド耽美で、精神科医が分析するために取り上げる作品の「憂国」もおすすめといえばおすすめか。
若かりしころ読んで、「教科書にのるような作家がなあ」と思った私はまだまだうぶであった。今読み返すと別な感想があるかも。
私は結局、読書「案内」と言いつつ、自分のために書いているな。
とりあえず「夏の」項はこれにて終了。「秋の読書暦」で続く。(たぶん)