予約投稿・本のメモ 「文豪春秋」ドリヤス工場

今は亡き水木しげる先生そっくりの画風の「ドリヤス工場」は

以前から気になっていたものの今回、初読。

私世代には国語の教科書でおなじみの日本の文豪たちを

文芸春秋」を創設した菊池寛銅像、あるいは絵に語らせる、

なかなか面白い作りで、その発想だけでも合格。

文豪たちの知っているネタだの知らなかったネタだのを

短いページ数でほぼ文字で紹介するという、

挿絵なんだか、漫画なんだか、よくわからない作りだが、

眠る前に数作読むのに最適。私は1週間お世話になった。

明治から大正、昭和にかけての文豪たちのダメダメっぷりや

どこかしら哀愁が漂うエピソードやら、

私は里見とん(私はずっと「じゅん」と思っていたが

このたび初めて「とん」と知った。でもでないわ、この漢字)と

志賀直哉のエピソードなど、全然知らなかったので、意外だったわ。

志賀直哉だっけ?

幼き日に馬に乗った軍人に声をかけられ連れ去られそうになったのは。

昔は「衆道」は珍しくなかった、そして私は美少年だった、なんてのを

語っていたのを読んだ気が。

そして志賀直哉の若かりしころをネットで引くとビミョーに三島由紀夫

似ている様な、とにかく濃い顔立ちだったわ、志賀直哉

そしてこれは作者のドリヤス工場の思い入れなのか、

あるいは語らせている菊池寛の思いなのか、

芥川龍之介が素晴らしい人物だった感触が残るのが不思議。

安定の借金大魔王、石川啄木のエピソードもやはり面白い。

「蟹と戯れる暇があるなら借金を返せ、啄木」と、

啄木の借金癖を知ると誰もが思うものだが、

今考えると、啄木は現在のいわゆる「発達障害」者なのかも。

それでも綴った言葉はやはり美しいのだよね、

「柳あおめる」云々は春になるとなんとなく思い出す。

金田一京助は偉かったなあ、

いつも嫌がらず啄木に金を貸したなんて、なかなか出来ない、

なんてことも考える。

そういう昔話を楽しく読める作品。絵柄が昭和だから余計良いのか。

ところでドリヤス工場さんは男性か女性か、

マイダーリンとあてっこして私は女性と見ているが、いかがなものか。さて。

読みやすいのでお勧め度☆5つで。終わり。