雑談。

この1〜2年、ネットに徳用マッチ並みに増えた女性「ライター」は実のところ「専業主婦」が多いようで、
私は20年近く前、人文系大学院が乱立した時期に大学院に進学した若い専業主婦たちを何故か思い出す。
「結婚で仕事を辞める」「仕事を辞めるのは夫の転勤について行くため」で仕事を辞めて、
でも「ただの主婦」にはなりたくない、かといって、もう仕事はしたくない、その意識の高さはどうやら大学院進学に向かったようで、
当時は出来たばかりの大学院に進学しやすいよう様々な公的補助があったらしく、さほど経済的負担もなく院生になれたようだ。
そのころの私は転勤先で二人の幼児育て真っ最中で、たまたま知り合った同世代ではあるものの、ずいぶんと考え方が違うものだと感心したが
数年単位で見ていると、彼女たちはいつも何かから「逃げて」いると感じるようになった。
聞くとさほど「ブラック」(昔はこんな言い方はなかったが)とはいえない仕事がいやで仕方がなくて「結婚」「相手の転勤」に逃げ、
でも「専業主婦」とは呼ばれたくないから「大学院進学」に逃げ、「大学院生」だから「子供を作ること」から逃げ、
どうやら「逃げる」ことが人生の目的のようだ。
常に忙しげにしているものの、大学院での研究成果が大きく現れたわけではなく、
大学院進学したかつての知り合いが無事大学教員職を得た話をまったく聞かない、何らかの研究職についた話も聞かない。
でも、子供を持った話も聞かない、ずっと忙しいままの結婚生活がうまくいっている話も聞かない。
もちろん、大学院進学を果たしても職を得るのは至難の業だということはよくわかる。
ただ、正直「何だ?こりゃ」のそれが学問なのかなんなのか、よくわからない、社会に需要があるのかどうか疑問な「学問」に飛びついて、
高学歴にはなれたものの、趣味性の高い分野でなににまい進しているのか、「それが学問だ!」といわれたらどうしようもないんだが、
大学院の費用はともかく、住むところ、食べるものに困らない経済力を「夫」に依存するのにためらいはなく、
かといって「勉強が忙しい」ので家事にも熱心ではない。
夫はそれなりの収入がある故に家庭にいる時間が少ないので、文句を言う暇もない。
夫を父親にしてしまった妻としか言いようがない、世間ではよく「夫が妻を母親にしてしまう!」を話題にするが、こういう妻の存在をどう呼ぶのか、
この手の人が「ジェンダー研究」に手を染めている場合があったりして、なんとも不思議な気持ちになる。
現在、大学院は公的補助が外れて簡単に専業主婦が進学できなくなったようだが、かつて私が知っていた長いモラトリアムに漂う彼女たちが
「ネットライター」に転身したように見えることが最近よくある。
たぶん、昔ならいやおうがなく子供を持っていたそれなりに恵まれた「専業主婦」なのだけれど、
「専業主婦」としての身分は保証されたいけれど、そう呼ばれたくない、なんとも複雑な意識を抱えて、常に「理由」と言う逃げ場を探す。
それが「ネット系ライター」に存在意義を見出したか。
かつての無駄に高学歴になった同世代の専業主婦たちのなかには少なからず心を病んだ人もいたりして、その病は「卵が先か、鶏が先か」と私に思わせる。
まだ若いネット系ライター兼専業主婦たちはこの先どうなって行くのか、はらはらしながら見ている。私と同世代の轍を歩まないことを望まずにはいられない。