経歴の盛り方(?)

10年以上前、子供たちがまだ小学生で、私がPTA役員をしていたころ、年に何回か「勉強会」を行う部会に属していた。
確か補助金の関係で外部から「講師」を招くことになっていて、その人選はそれぞれの学校に任せることになってはいたが、
実際は、PTA本部の上位校(特に「上位」ではないが、本部の役員が多い学校の権限が強い慣例があった)が選んだ外部講師を
それぞれの学校が順々に講師として招くのが「習慣」となっていたので、私のときも上位校から紹介された講師に連絡することになった。
どの分野か特定は避けるが、その経歴を見たとき、私たち役員は「あれ?」と思うところがあったものの、
他校からの紹介と言うことで特に詮索はしなかったものの、たまたま役員の中にその経歴の一部にかかわりのある人がいて
詳しく調べたところ、どうにも怪しい。
しかしその確認がはっきり取れたころには、もう講演の申し込みも既に済んでいて、どうしようもない。
とりあえず今回は他校推薦だし、目をつぶって、と、実際の講演内容も「?」になるような内容も含まれてはいたものの、
皆、講演会は「お付き合い」としてきているので、半分以上寝ていたりする、特に問題もなく済んだので良かったな、と、
ただ、「この講師は少々怪しい」ということがわかってしまった上で、他校に推薦するべきかどうか、
外部講師本人が別の学校への推薦を求めてきたので、どうしたものか、部会の役員で話し合った。
結局「知ってしまった以上、推薦は出来ない」と当時の部長が英断を下し、外部講師もこちらがちらりと問題のある経歴に触れると
何も言ってこなくなった。
紹介がなかったので、その講師の講演会は私たちの学校で止り、それとない情報のすりあわせがあったのか、
次の年からその講師が招かれることは私たちの地方ではなくなった。
しかし、数年後、経歴に怪しい点を指摘した人が見つけたところ、怪しかった経歴はいつの間にか講師のプロフィールから消え
代わりに「○○小学校PTA推薦」などと、経歴の中のひとつにウチの小学校(そのころはとっくに私の子供たちが卒業していたが)
での講演会も数に入って、いやはや、講演会の「実績」は確かにある。
ただ、胡散臭さはマックスまであがるよな、と連絡を取り合った当時のメンバーで顔を見合わせたことがある。
こりゃーとんでもないな、と思ったところで、特に実害はなかろうが、相当怪しい人物であるのは間違いないし、
と言って、どこの誰にこのことを伝えるべきか、とっくに私たちの子供たちは学校を離れているし、私たちは既に役員ではない。
責任のとりようもないというのが後悔するところ、
私は以来、よくわからない「講師」を名乗る人の「○○小学校推薦」などという文言は一切信用しないことにしている。
「嘘は言ってないな」ってな経歴は案外簡単に「盛れ」る。
どうやら、私が役員をしていた当時、上位校の役員の中に簡単に人に丸め込まれるタイプの人間がいたようで、
その人が「いい人だから!」と言えば、なんとなくそれがまかり通る。責任の所在があいまいな場所にそういう人間は集まりやすいらしい。
ショーンK氏のことは、この手の傾向がある場所にうまくもぐりこんだ、ということなんだろう。
経歴も、その人物の人当たりのよさも、信用しづらいこの世界、
大昔、高橋春夫が「話してみて悪い人なんていない」と言ったのはまさに名言だと思う。
「話せば悪い人じゃないよ」とはよく用いられるどこか正義のにおいのする言説だが、
本当に「話してみても悪いやつだった」って存在しないのよね。むしろ「話しても悪いやつ」はわかりやすくて親切だ。
人間はとかくだまされやすい、経歴も簡単に「盛れる」を思い出したので。とりあえず、記録。