読書メモ 「異形の維新史」 野口武彦

草思社出版。
野口武彦先生のなんと「短編小説」!「小説」と言い張れば小説になるわけでは、、、(涙)な「自称」小説、内容はいつもの幕末雑談。
先生は何を思われてこういうものを出されたのやら。自身の感覚を絡めたエッセイ本でしかないような。
とにかく野口先生は上方文化的なものが昔からお嫌いで、神戸大学時代にどんな「イケズ」をされましたか、と心配になる。
はて、神戸大学は野口先生が在籍当時は京大閥でしたかねえ、、それにしても今回の本でも「関西人、きらァい!」が顕著。
ひょっとして維新史を専門に書かれるのも東が西に非道なことをされた!を主張するためなのかねえ。いや、実際は東の方が先に悪いんで。
それはともかく最初からとばす、とばす。
「薔薇の武士」は好色な関白が実直謹厳な武士の清らかな娘を差し出せで、次の「軍師の奥方」はやはり武士の奥方のセックス絡みの悲運(?)、
今ふと気がついたが今回の野口先生、「エロ」ネタが多いのよね、「船中裁判」も日本初の「セクハラ」裁判だし、「名器伝説」はタイトルがまんま、
赤毛の人魚は直接的なエロ小説、いやはや、雑誌社の意向ですかねえ、、、「草思社」って普段、何を出してる出版社だっけ。
先生の思い入れが最も深いのが、エロネタはとりあえずあからさまには「ない」「木像流血」ですかねえ、、、
これは高潔なる「仏教」がいい加減な「神道」に侵される、という話なんだが、
大昔、手塚治虫の漫画(多分「火の鳥」)で、かつて仏教が日本古来の「八百万の神」を権力とともに駆逐した過程を涙とともに読んだ私としては
「なんや、昔やったことをやられてるだけやんけ」的な、しらっと感があったわ、どっちも「創作」なんだけどね。
ぼんさんのいい加減さを知ってるいい年のおばはんとしては紅涙を絞って書かれているような文章に特に感傷はなし。
存外面白く思ったのが「犬死クラブ」、幕末に回し読みされた珍書に関して、どうも当時もいわゆる「中2病」を患った奴がいそうだ、みたいな、
ネットでもいるねえ、こんな奴、な部分が個人的に面白かった。時代を超えて「あるある」ネタか。
一番面白かったのが「名器伝説」でこれは当時の医学者がいかにいい加減であったか、「医学」という名の下世話さを描いて、
でも「医学」って、多分「下世話」だから発展したんで高潔な「科学」の精神は、その最も近いところにいる人間はあまり持ち合わせていなさそうだ、
は先日の「スタップ細胞は、あります!」事件でしみじみわかったわ、でもそれでいいのよ、結果的にはそれでも「進歩」するものだから。
どっぷり文系は理系の「科学」に夢と理想を抱き過ぎかも。ズブズブ文系もいやらしい世界だしねえ、、、
「名器伝説」で面白いと思ったのが、当時も今もエリート男性が持つ「女性恐怖」、男を殺すような女はいかに通常の女とは違うか、
それを解体して解明しなければ彼らの世界が滅ぶというような。今でも精神科医が「母親を殺せ!」と言わんばかりの珍説を唱えているものな、
お前ら、医学部行くのによほど母ちゃんに勉強させられたな、みたいな、女性を憎悪するのは医学の基本だったりして。
てなことをメモって、お出かけ。しばらくネット日記はお休み。