ル・カレ「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」

ハマる。
ル・カレがこんなにロマンチックな作家だったとは。20年近く前「寒い国から来たスパイ」を読んだときは気がつかなかったなあ。
上の子を出産したばかりの頃、何故か「チャーリー・マフィン」にはまってフリーマントルばかり読んでいた私に
ダーリンが「古典を読みなさい」と読まされたのだけれど、彼の亜流を読みまくってしまった私はオチに新鮮さを感じることができず
「面白くなかったー!」と、今回の「ティンカー」もかなり早いうちに「犯人(?)」がわかってしまうので、「ミステリ」として読むとイマイチかも。
でも「スパイ小説」であって「ミステリ」ではないものね。
20年ぶりにル・カレを読むきっかけとなったのは、ベネディクト・カンバーバッチくん出演の「裏切りのサーカス」を見るための予習で、
この映画は評判はいいものの、難解らしい。読んで納得、これはどんな映像にできたのか、DVDを見るのが今から楽しみだ。
回想と思考と現在と過去が入り混じりながら展開していく物語なので、これを解きほぐしながら終末に向かわせるのは大変だろう、
でも私はこういうみっちりした心情描写の本が好きだなあ、PDジェイムズを読んでいる気分になった。
私の最近のお気に入りベネディクトくんがどの役をするかというと、主人公の比較的忠実なる部下、ピーター・ギラムで、
映画ではギラムはゲイとして描かれているそうなのだけれど、原作では割とかっこいい(チャラい?)女好きだったりして、
はて、映画は完全に「男祭り」状態として描きたかったのか、特にギラムをゲイにする必要性は感じなかったものの、何か理由があるんだろう。
かなり昔にアレック・ギネス主演で評判のいいテレビドラマになったこともあるようなので、その時の設定がゲイだったのかも。
なんにせよ、中高年向きのロマンチックな娯楽小説なので続編の「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」も借りてきた。
ル・カレの作品はパズルっぽい。そのパズルをみちみちと組み立てていくのがなかなか。ル・カレ、再発見。