読書雑記。

同じ本を読んだ他人の感想から、自分の傾向が見えてくる(気がする)。
久々に丹念に読んだ娯楽小説「スマイリー3部作」を、私は「こうもええ年の男がもんもんと女のことばかり考えられるもんだ」と
半分呆れて、とにかく一番もんもんするのがスマイリー。
ま、仕事がらみで妻との仲が決定的になったというのが作品の大きなモチーフではあるのだが、
敵対する「カーラ」にしても記述はされないものの、もんもんしてそうなんだわ、周囲もなんだか常にもんもん、
で、私が「唯一の愛の勝者」と思うピーター・ギラムくんも「お付き合い」でもんもんか、なんて考えてしまって、
3作品の中で最も私の評価の低い「スクールボーイ閣下」に至っては、これだけ女で失敗してきた男が最終的にまたそれで失敗かよ!
ってなツッコミを入れたりして、よくよく考えてみたら、私はどちらかというと異性を思ってもんもんしたことがあまりない人間だ、
だから異性関係でしくじる心を今ひとつ理解しきれないところがあるんだろう。
私が「ティンカー」で一番好きな人物は、なんと最大の裏切り者である「もぐら」で、
大戦後、心のよりどころを失って共産主義に(というよりもソ連という国に)忠誠を誓うことで目的を見出す、
それが脆弱な根拠であるのをじつはわかってもいる、認めることはできなくても。
故に自分のセクシュアリティーを裏切るようなことも平気でやっていたり、愛の関係においても自滅の傾向を持つ、
私は「もぐら」が一番かわいそうだったな。
本質的にはくだらない人間であることを相手に見抜かれながらそれに気がつく能力もない、でも、なぜか、愛される。
裏切り者であっても愛される、それは本当は悲しいことでしかない。周囲にとって以上に、本人には。
ネットで拾い読んだ感想で、ギラムのセクシュアリティーを変えることで「もぐら」に非常に似ていることになるとの記述があって、
これが映画でそれを変えた一番の理由かな、と思った。
ピーター・ギラム君は、愛される素晴らしい面ばかり持つ明るい人間で、暗黒面が「もぐら」のようには、ない。
ピーターくんは、「もぐら」を「もぐら」と分かる前は自分の「理想」と考え、「もぐら」とわかったあとでも憎みきれない、
短い映画でその関係をあらわすのに、セクシュアリティー変更でできたかどうか、映画を見ないと分からない。
なんにしても、私は異性関係にどこかしら疎い、どうでもいいことのように考える傾向があるな、と今さらながら分かった。
年をとる前からそうでしたわ、だから結婚が早い。(ちがう)
作品中で、一番自分に近いと思ったのが、誰からも嫌われている、でも全然それが気にならない、というか、気もつかない、
当時でも「ゲイ」であることを全く隠さない「ロディ・マーティンデイル」だった。
私は主人公スマイリーに嫌われるキャラだわ、だから彼の「もんもん」に共感しないのかも。
だらだら感想、これにておしまい。