おきものがたり。(その2)

「振り袖でゴー!」とよく考えもせず、展示会場に無邪気にむかった「鴨ネギ」母娘の話はさておき、
私が二十歳のころ、振り袖を買ってもらった同級生に自分の高かった振り袖を娘に譲るか?とたずねたところ、
返ってきた答えは「全然、そんなことは考えたことがない」
なんと!20数年前、買ってもらう振り袖はトータルで100万円はくだらないと聞いたというのに、この親不孝もんが!と私が言うと、
「その親の管理が悪くて、着物がかびた」「大体そんな中途半端に古い着物をイマドキの子どもが着たがるわけが無い」
ともだち曰く、「着物にも流行り廃れがある」「色の流行だってある」「そもそもサイズが合わない」「着物は一生もの、なんてウソ」
じゃあ、あのとき親が払ってくれた「100万円」はいったい何?
「まあ、何回かは着たしねえ、、、」「もともと結婚したら着られないような着物を作るなって事よ。」
「そもそも結婚してから子どものお宮参り以外で着物って着た?」
「そういえば、袖を切ったら付下げにもなる、って言われて買ったけど、イザとなるともったいなくて袖が切れなかった、そのときは子どもに着せようと思ったのかなあ、、」
「やっぱり着物は管理が大変、借りるに限る!」と、
今や、成人式の振り袖が買われなくなったのはあながち「不況」のせいではなく、かつての子どもたちが「学習」して親になったって事かなあ、、
「大体結婚して着ることのない着物なんて実家に預けるじゃない、その管理を親が出来なかったって事は、そもそも買うほどのこともなかったって事よ」
「うちのお母さんなんて、青春時代が敗戦直後だから、振り袖なんて無かった、って言ってたしなあ、、」そういや、うちの母も持ってない。
私が二十歳のころに親が競って娘に振り袖を買い与えたのは、貧しかった自分の青春への決別の意味もあったのかしら、
なんて、しかし、君たち、持っているものは感謝の念がないねえ、私なんか、ともだちの結婚式にワンピースで行って
ともだちのご親戚に「失礼な」と叱られたことがあるわ、
まだその当時、私の地元では未婚の女の子は友達の結婚式に振り袖で行く習慣があったものだ、それをしないと「無礼な!」と、
「すみません、振り袖持っていないんです」と正直に言ってよけい相手を気まずくさせた記憶がフラッシュバックのごとく、、
いやはや、ろくでもない記憶ばかりが思いうかんだわ、なんにせよ、自分の子どもの気に入った着物を選べるのは幸せだなあ、
人間は、常に今が幸せなのよ、お着物事情もここ20年ほどでずいぶん変わってきたものだ、
今では親族でもない限り、未婚の女の子が振り袖を着て結婚式に行くことはないらしい。用意が大変だものね、、
それでも女の子は振り袖が着たい、20年以上たっても。むしり昔より積極的に「着たい!」のかも。
きっと和服が「コスプレ」的に受け入れられているんだろう、それはそれで和服の生きる道か。(続く)