「NHKスペシャル 木嶋被告100日裁判」感想、その他。

タイトルに「木嶋被告」と銘打ってはいるけれど、基本的に内容は「裁判員制度の検証」って感じ、
放映時間も40分程度で「クローズアップ現代」のちょっと長めバージョン、裁判員制度の問題点を深く掘り下げたというわけでもない。
ただ、裁判員を経験した人へのアンケートを見て、みなさん、「人を裁く」ことにどこかで罪悪感を抱いているらしいなあ、
人というのは言葉で表現される以上に善良だ、としみじみ思う。だから「詐欺」事件が頻繁に起こる。
人間の善良さの隙間にうまく入り込んだ事件が木嶋被告の事件だという気がする、
人がそこまで悪いことをするわけがない、という、生きていくためには不可欠な考え方を上手に利用した事件、その利用が今もまだ続いているか、な?
番組では裁判員経験者が木嶋事件の模擬裁判をしていて、「死刑」はほぼ「妥当」と結論を出されていた。
私が面白く思ったのが、裁判員たちが必要とした「証拠」の提出が弁護士側の申し立てによって提示されなかったこと。
具体的に言えば、被害者の一人の大出さんの手が「汚れていなかった」、それを裁判員さんたちは「鑑識の結果はなかったんですか?」と問い、
それに対してその結果の提出は弁護側に「拒否」された、と、あらまあ、何かが「真っ黒」って感じ、
もし、少しでも手に炭の痕跡があればそれを弁護側は利用したと思うしねえ、、、
「弁護士さんは「無実」なんて信じてないんじゃない?」と、一緒に番組を見ていた配偶者に言うと「いや、別の人間が殺した可能性だってある」などと、
被害者の方は、そんなに多くの人に命を狙われていたの?みたいな疑問が、私にはふと。
私にとっては「それでも僕はやってない」よりも「シャルウィダンス?」の監督と言ったほうがわかりやすい周防監督が出演していて、
周防監督は「裁判員が人を裁くことの難しさを感じるように、プロである裁判官も常にそう感じている」的なことを語られ、
周防監督自体は裁判員制度を充実させることを希望しているよう、私もそのほうがいいかな、と思う、始まった限りは。
しかし、自分は出来ればやりたくないなあ、私はご遺体の写真を見ることができないだろうからなあ、、、でも、あたればやらざるをえないんだろう。
先週出た判決のあとで、木嶋被告本人が朝日新聞に「手記」を発表し、一部が朝日新聞紙上で紹介され、ネットでは全文が転載されていた。
その文章の評価が一部で何故か高いように思ったが、ブコメでも指摘されているように、
私は使い慣れていない言葉をわざわざ使っている、ネットの自分語りによくある文章として読んだ。退屈な内容だったなあ。
内容で気になったのが、木嶋被告が「朝日新聞をよく知らない」と書いていたことで、そのくせ「朝日ジャーナルは家にあった」と、
地方で「朝日ジャーナル」を定期購読する家庭は大体新聞もとっていたものなので、「あれ?」と思っていたら、
北原みのりさんが「週刊朝日」で「朝日新聞は木嶋被告の家庭でとっていた」と指摘されていたので、やっぱりな、と、ま、忘れているのかもしれないけどね。
私の実家では「朝日ジャーナル」は新聞とともに放り込まれていたので、「日曜版」みたいに新聞に「ついてる」ものかと思っていたな。
なんにせよ、「毎日」でも「サンケイ」でも「読売」でもない、わざわざ「よく知らない」「朝日」に手記を提出とは
木嶋被告にほのかな「ブランド」嗜好を感じて、なかなかに香ばしい。
あほな女がよくやる「私、ブランドなんかよくわからないんですけど、たまたまこれが気に入って、それがブランドだったんです」みたいな「どや顔」を
見せられている気分だったなあ、こういう人ってよくいるんだよね。
手記を読んで、私の木嶋被告への印象は「自分がありふれた存在に過ぎないことを認識する能力のない人間」として確定してしまった。
北原さんもそれがわかってしまったんじゃないかな?もうこの事件を追うことはない、と「週刊朝日」に書かれていたし。
うんざりするほど、木嶋被告はありふれた人間なんだわ、
ものすごく特殊に見える事件を起こした人間であるから、もっと「何か」があるように多くの人に思わせたけれどね。
ひょっとしたら、この事件みたいに「事件」になかなかならなかった事件って多いんじゃないのかな?事件自体もひょっとしたら「ありふれて」いるのかも。
この事件も最初は「自殺」「事故」と処理されて、発覚がかなり遅れたようだし、こんなにも「事件」を見のがす警察って怖い、が今回知ったこと。
NHKスペシャルに話を戻せば、この事件を見た法律関係者のツイッターまとめが面白かった。
「直接証拠」や「状況証拠」の言葉の意味自体をわたしは知らないんだな、とあらためて。
木嶋被告の審理は100日もかかって、およそ1年の3分の一という長さだったけど、経験された方は「長さは気にならなかった」そうで、
人間は本当にマジメだなあ、私もそのときが来ればマジメになれるのかな?そのときが出来れば来ないで欲しいものだな、が、事件と番組への感想、でした。
おしまい。