おすすめ本。

3月11日以降のあれこれにかんする読み物をいくつか見て、今まででいちばんその漠然とした「不安」をうまくあらわしていると思われたのが
福満しげゆきの「うちの妻ってどうでしょう?」の4巻、だったりする。
104話から震災にまつわる心境の変化をとてもわかりやすく語っていて、もともと、この人は今「不安」を語らせたら天下一品ではないか、と思っていたのだが、
子供が生まれて以来、日常にかんする小さな不安が本当にちょっとしたことで増幅していく心理をやさしく、かつ、細かく描き出しているので
強く共感を覚えている。父親だって、不安なんだ、をこれほど正直に書いた人はほかにはいないんじゃないのかな?
震災以後、ネットでよく見かけられたのは(特にはてなで)「冷静に行動する事こそ、父親(=男)の正しいあり方だ!」的な、
なんだかその冷静さがいかにもとってつけたような、妻の不安を受けとめるよりも押さえつけてるような、
いざというときそういうあり方を見せる男は、私の経験上、あんまり当てにはなりませんよ、とつぶやきたくなったことが多々あった。
まあ、遠く西に離れているというのに「どうでしょう?」の「妻」ちゃんみたいにすっかりパニックになっているようなへたれダンナを持つ女が
何を言っても鼻で笑われるんでしょうが。
でも、その「へたれ」ッぷりをまっすぐ出してくれる人の方がわかりやすい、と言うか、理解しやすい、むしろ話しやすい、が私の意見だったりする。
話し合いの余地があるのよね、「これが正しい道だー!」を宣言する男に比べれば。
と、言うわけで(?)、福満しげゆき氏は私のお気に入りマンガ家の一人に決定。
家族全員に福満氏の「妻」ちゃんが大人気で、時々「妻」ちゃんが夫である福満氏を虐げる言動をしても、
女3人男一人のわが家では圧倒的支持を持って「妻」ちゃんの「勝ち」と見なされている。
「これは妻が悪いよ」と子どもたちの父親が意見することがあるが、「そんなことはない、こういうもんだ」と、
女3人にわぁわぁわめかれて、わがダーリンは、分が悪い。
男は辛いね、でも本当のことを言うと、妻や娘のあとをそっと追いかけてくるような夫や父親がいちばん愛されるんだと思うわ。
そしてそれが本当の意味での「男らしさ」じゃないかな。
福満氏は「元カノがひとりもいない昆虫人生」とご自身を語っているが、その人生はそんなに悪いものじゃないとわたしは思う。
しかし、かつて私が育児をしていたころ「赤ちゃんが来た」とか、子育て漫画が出始めて、
20年近く経った今、父親の子育て漫画が出てきたんだなあ。そういう意味でも「うちの妻ってどうでしょう?」はおすすめ。
僕の小規模な失敗」「僕の小規模な生活」とともにおすすめ本とする。