越智道雄 町山智浩 「オバマ・ショック」を読んだ。

オバマ・ショック」といいながら、「オバマ」のことは「第5章」まで出てこないやんけ!しかもその次の章が「終章」だし。
とはいうものの、ここ20年ほどのアメリカ政治の流れを対談で追ってくれるので、読みやすい。
私が面白いと思ったのが「アメリカンドリームとは家を持つことだ」と書かれた「第3章」、
これはアメリカの成り立ちがそもそも「家」を求めてきた人たちの集まりだ、の「フロンティア精神」とつながって興味深い。
それは戦後日本の「夢」でもあったわけだから、日本は「夢」までも「アメリカ」に占領されてしまったのかしら、、なんて思ったが、
「自分の家が欲しい」は万国共通した願いだから、アメリカはそれをあからさまにした、と言うだけの話かも。
アメリカンドリーム」が「アメリカで家を持つ」こととすれば、その「夢」にアメリカの国民全てがつながれて、
故にいっそう「ホームレス」であることや「トレーラーハウス」の存在の惨めさが際だつ。
で、「サブプライムローン」にどのような意味があったかがわかってくる。みんなが「アメリカンドリーム」をかなえようとしたのだ、と。
しかし、この本を読んでいて、その政治や国民の意識、その他、アメリカではなく日本のことを書いているようにも感じられるのが憂鬱。
アメリカに常に追随する国であるからなんだろうが、それほど近くでいる「つもり」でありながら、ほとんど「アメリカ」を何もわかっていない、
WASPくらいは知っていても、その「宗教」まではわからない、世界で「宗教」ほど力を持つ思想はないんだな、
日本の一般庶民は八百万の神を信仰していてよかったわ、(つまりほとんど「無宗教」だし)
「宗教」が生き方を決めてしまうこともある、その選択肢が「ある」ということだけでも私的にはどん引き。いやー、ある意味立派だけど。
アメリカのように新しい国ではそれが「自然」であるのかもしれないな、ルーツが違えども信仰する「神」が「同じ」であることでつながれる。
それが「選挙」でも生きてくるのがこわい、とか思ってたら、今の日本の与党もそうだったわ、、、日本はミニサイズアメリカ。(涙)
第4章で「大軍事力はゲリラ戦にはかなわない」というようなことを書いてあるけど、今のガザを思うととてもそうとは思えない、
それともイスラエルのそこの住人を「閉じこめる」、と言うやり方が功を奏しているということか。
では、イスラエルのやっていることはかつてナチスが収容所でやったことと同じ「虐殺」で、
いずれ生き延びたガザの住人がいつか圧倒的な力を得て復讐するか。なんだかなー、いつ果てるんだろう、この無駄な「つながり」。
それを断つことが出来るか、オバマ大統領、と言うことで、「第5章」、「終章」、となるわけだけれど、
何せ、昨日就任したばかり、しかもあまりにも「負」の遺産が大きすぎる。
この本の中ではローズベルト大統領の「100日」と同じく「100日」以内に何かをしなければ、と課題を出しているものの、
そんなに簡単に手が打てるものなのかどうか、私は大国初の有色人指導者が任期まっとう半ばで命を落とさずにすめばたいしたものだ、としか
考えられないくらい悲観主義者だったりする。あのアスファルトにすら沈んでいきそうなすごい専用車を見ただけでも不安になる。
リンカーンとか、キング牧師とか、そんな縁起の悪い指導者を目指すのはやめた方が、、、なんて、
それほどまでの偉業を達成するつもりとの意思の表れなんだろう、勇気のある目標だ。
「日本のオバマ観は歪んでいる?」のくだりで、(注:日本の識者は「オバマだと日本は困ることになる」とかいってるらしい)
「日本は典型的な「navel watcher」(自分のへそだけを見て周りが見えない)です」とは、的確な指摘だと思った。
「逆に言うと2004年の大統領選の時に「ブッシュが再選された方が日本にメリットがある」といった人もたくさんいたわけです。
その人たちに聞きたいですね、一体この4年間で、日本に何かメリットがありました?」の、シメの言葉をここに書いておこう。
1時間ほどで読める面白い本でした。でも「オバマ」氏のことが詳しく書いている本ではありません。