本を読んでも、、

内田樹さんの「下流志向」を読み終えた。
うなずかされたり納得できたところはいくつかある、が、本を読んで思うことがあったので少し。
子供の中学で総合の時間に「ニートやフリーター、引きこもりにならないために」と言う講演をしてくれたことがあるらしい。
子供達の中学は地域最底辺校として歴史があり、私が通っていた頃から毎年、一定の「社会不適格者」を輩出している。
そのせいか、よく警察の方が講演に訪れて「薬物依存」の恐ろしさだのなんだのを生徒に聞かせる。
しかし、本当の「予備軍」は学校に来ていないのでほとんど役に立っていない気もする。
警察関係者だったかどうか知らないが、その講演の内容を聞くと「薬物依存者」同様、「ニート、フリーター、引きこもり」も
「社会的脱落者」の烙印を押されていて「あんなものになってはいけません」と、生徒達全員を「予備軍」と見なして話してくれたらしい。
講演者は「本ばかり読んでいたり、パソコンに詳しい人は、「おたく」になる。そういう人がニートや引きこもりになりやすい」
などと、妙な「笑い」を子供から引き出しながら話したそうだ。
そのおかげで「ニート」「フリーター」「ひきこもり」はすっかり「否定的」な言葉としてすり込まれ
いじめをする子供達の「罵倒語」を無駄に増やしてしまった。
子供が話してくれた、「いじめ」の一つはその講演会の後で
「委員長(=私の子供)って、パソコンに詳しいし、勉強好きだから将来は絶対ニートや引きこもりになる」と騒がれたことで
子供が「そんなことはない」と言い返すと、
「おこったのは本当のことを言われた証拠、ニートニートニート」と大声で叫ばれ、みんなから笑われたそうだ。
子供は反論するのをやめたが、それもまた「やっと本当のことを認めた!」とおどけられ、
学校から帰ってきて、涙ぐみながら「私はニートなんかにはならない」と言われて私はつくづく困り果てた。
「なるわけないでしょう」と母親の私が言っても、中学生の子供にとって「自分への評価」はもう「外部」に向かっているので
親に保証されただけでは安心できない、また、このような「罵倒」を中学生の子供に我慢しろと言うのは無理だ。
私はネットでもよく見かける、くだらない「レッテル貼り」をする子供のやり方にも憤りを感じたが
ニートになっては人生おしまい」のような短絡的な考え方を教える人間にも腹が立った。
大体、地元の教育委員会が独自に作成している小冊子でも
ニートやフリーター、引きこもりにならないようにしましょう」とはっきりと書いてあって、
私は前々からそういう方々は必ずしもなりたくてなったわけではないだろう、と思っていたが
こうもあからさまに書かれるとより疑いを持つようになって「ニートって言うな!」を読んだ。
で、今は誤解されている気の毒な人たちも多く含まれているのだと感じている。
言葉が誤解されて一人歩きをし始めて、嫌な使われ方をして無駄に人を傷つける、
内田樹さんの「下流志向」に書かれていることはこのような短絡な考え方を保証する部分が幾分かあり、
しかし、何故、その短絡ぶりが浸透するか、その土壌に対して鋭い考察もあり、考えさせられる内容だった。
私は講演をする方はもっときちんと色々なことを調べて出来る限り真実に近いことを「正しく」子供に伝えて欲しいと思っている。
でも内田樹さんのような方でもこうなのだな、と、がっかりした。
しばらく我が家で「ニート」は禁句になって、「ニートって言うな!」を読んでいるところを発見された時は涙ぐまれたが
折を見て本の内容を話して、納得してもらった。
ちなみに中学男子に嫌がらせをするときの最強罵倒語は「アニメおたく」だったりする、今や日本が誇る「世界のおたく」なのにね。
内田樹さんの感想文はまたそのうちに。
今回、秋葉原でひどい事件があって、この犯人像がまた一人歩きをしていじめのネタに使われないようにしてもらいたいと
心から思った。