「ナショナリズムとジェンダー」を読んだ。(その2)

申し訳ない話だが私は5冊くらいの本、雑誌、漫画を同時進行で読むという悪癖をもっている。
今は「ミセス」と「戦時期日本の精神史」と「ピカピカキッチン大好き」と「婦人之友」と
「生き延びるための思想」を読んでいる。よくないとはわかってるんだけどね、時々引用がゴッチャになるし。
でも私の本業は「専業主婦」なんだよ、半端に見られちゃあ困るが私はかなり専業主婦としてはよく出来た方で、
このあいだどこかで主婦仕事の年収を換算したら「1500万」ってのを読んだが、おう上等、
それくらいは働いてるね、常にベストなキッチンを目指して研究に余念のない事だし。
コンピューターを立ち上げるヒマに床を拭いて、日記を書いたり読んだりの合間に掃除して洗濯して料理作って
買い物メモ書いて子供の勉強見てと、うっかりすると新聞も数日ぶんまとめて読まんといかんほどヒマがない。
(だから政治ブログランキングで見かける自称「主婦」など私に言わせりゃ、「主婦失格!」だ、あんなに
あちこちショーもない情報あさってるヒマがあるならぬか床でもかき混ぜろ、と言いたい、全くあんなのが
「主婦」面するから「専業主婦」が迷惑するんだよっ!!)
私は幼少期より本から離れた生活をした事がないので本も読みたい、たくさん読みたい、
で、ちょこちょことあちこちで別ジャンルの本を読むというわけ。ここに来たらこの本読む、とかね。
でもやはり面白い本は途中で手放せなくなって持ち歩いて読む、「ナショナリズムジェンダー」は
そういう本の一つだった。
3部構成になっていて「国民国家ジェンダー」、「『従軍慰安婦問題』をめぐって」、
「『記憶』の政治学」と、ある。
私にとってもっとも面白く、衝撃を受けたのは「従軍慰安婦問題をめぐって」で「性犯罪」と「戦争犯罪」の関係を
これほどわかりやすく、鮮やかに語ってくれた本はないと思うくらいだ。(勉強不足なんで違うかもしれないけど)
「作る会」だの「純潔教育」だのが大好きな面子はまこと口だけは達者で気の毒な方々の揚げ足取りばかりしていて
何も知らなくても胸くそ悪くなるくらいだがそれに対して一つ一つ丁寧に応答していく上野千鶴子さんの言葉は
あのような馬鹿を相手に「親切」と言っていいほど丁寧だ。
かたい文章に自在に感情を潜ませる手腕は美しいとさえ思える。
どうしても私は、「従軍慰安婦」と言うものに憐憫の感情を抑えきれない、
それ以上に、そうした職業に貶められる存在に手放しの同情を与えずに入られない。
「汚されてもいい」存在と、「汚さない存在」と、それは一体誰がきめるのか、「汚れる存在」にその意志はない。
全ては同じ女と言うのに。その自己決定権を持たない対象である私は「汚れない存在」である事を希求する、
が、その心をどのようにに表現したらいいのか、よくわからなかった。
ハナから甘ったるくヨタばかり飛ばす連中の事を信用はしないし、かといって巧妙に仕組まれた宣伝工作に
反論する術は私にはない。このもどかしさを上手に解きほぐして対抗してみせてくれたのが上野千鶴子さんの
この「ナショナリズムジェンダー」だった。内側の女性史にも批判の光明を与える正直さには感動をおぼえる。
ずっと戦争中女性活動家はどうしていたのか不思議だったので(これは第一章で論じられている)
一つの納得する答えを見せてくれた上野さんには感謝。
上野さんの説が完全だと言うほど私は本を読んではいないので、少なくとも無知蒙昧で実生活にいそしむことに
満足するただのおばちゃんが知りたいと願っていた事はこの本の中に十分あった。
それは大きな賞賛に値すると私は思う。大勢のごく普通に生活をしている本を読む人におすすめしたい。
上野さんの本は決して「過激図書」などではない。
多くのより多い知識を持つ人が上野さんのレビューを書かれているので
私にとって素直に感動出来たこの本について書くのは本当に難しい事だ。いい本ですので是非一読を!