スタンスというもの。

なんでか右に振れがちな保守系の人は靖国の成り立ちやら今の宮司の出自やらを書いて、
「だから東条英機の合祀は正しい」的事を臭わせるが生憎と私のような好き嫌いで物事を判断する人間にとっては
詭弁に聞こえてしょうがない。かつて総理大臣であり、また、その当時日本の「神」で「国体」であった
天皇陛下」を御守するために「殉死」することは必要不可欠の事であってそのことに関して同情するのは
かえって東条英機の「軍人」としての「責務」の「遂行」ぶりを疑うことにも聞こえてくる。
また多くの無駄な犠牲者を増やしていったことについて、止められない狂気の世界に誘う一因となったことは
まぎれもない事実で今さら「A級戦犯は同じ戦争の犠牲者だ」と言うのなら日本はもっと今のイラクフセイン氏に
同情的であるべきだ。また北朝鮮のキムジョンイルに対しても。
東条英機を「生け贄」と呼んで惜しむ気持ちは個人的な「感傷」として留め立てしないし、
私は東条英機自身を「悪の権化」と思ってもいない、どこかの馬鹿は広島の桜を折ったり原爆記念碑の文字に
赤ペンキかけたり字を削ったりするようだがそんな愚行をするわけでもない。それでも東条英機が「靖国」に
合祀されている以上私は総理大臣の「靖国参拝反対」の位置に立つことにためらいはない。
東条英機が奉られるのなら他に名もなく声もなく焦土と化した日本で、或いは中国で、南方戦線で
土にかえった人たちは一体どうなるんだろう、私の祖父は軍医として共に戦線に送られた生き残った少数の人たちが
運動をしてくれてようやく靖国に納められた。祖父の墓には何もなく石さえ入っていない。
祖父のいた戦線は壊滅状態で数少ない瀕死の生き残りから口伝てにその死に様を随分後になってから家族に
伝えられたに過ぎない。それに対して東条英機はどうだったか、少なくとも何故死んだか遺族のものは知っている。
私は立ち位置の違う人間の書いたものを全く読まずにいるほど偏狭ではないのでたしかに誰が悪いと
黒白はっきりつけることはこの件に限らず難しいと知っている。曖昧にお茶を濁して自分を傷つけないように
することは簡単だし、またその方がよほど「賢く」見えることでしょうよ。
誠によいお家に生まれることは結構なことで重大犯罪と見なされたことでも名家に生まれたボンボンが
引き起こしたことであれば、まず、その「罪」が「罪」であるかどうかを論議するところから始められる。
「血筋」がやったことを「チャラ」にしてくれる、それが正しいという人がいるのを私は知ってるし、
正しいなら正しいんだろう。なんだって正しいんだ、アメリカがイラクを爆撃したことだって、
アルカイダアメリカを攻撃したことだってロシアがチェチェンにしたことも、ルワンダで起こったことも、
ドイツのユダヤ人収容所であったことも、イスラエルで起こることも、何もかも正しくて起こることばかりだ。
誠に御立派!いくらでも東条英機を追悼して下さい、靖国ででもどこででも。
でも私は靖国東条英機がいることを認めない。それが正しくなくても認めない。
出自やら成り立ちやら政界の力関係を持ち出されても嫌なものは嫌、変えることはない。
「知らないものは知らない」と言うほど私は若くないので「知っている事は知っている」と一応書いておこう。
でも「靖国参拝」に反対するのは知っている上で私が決めたこと、「参拝賛成」派の気持ちを変えさせることを
とっくに諦めているように私が一度決めたことを変えることはない。それがスタンス、というもの。