日常。

先日購入した「ザ・トレンチ」って感じのコートがたいそうお気に入りで

このたっぷり感がたまらん、何でもっと早くに買わなかったのか、と、

以前買ったコートは超細身で(自分がすくすく育ったことは棚上げ)

着るのを渋る程度だったのを忘れていい気になっていたら、

この間某所のパウダールームで「ザ・探偵」な姿が見えて、

誰だよお前、なんて思っていたら「自分」で、

無駄に背が高く、態度のでかいおばはんが

自立出来るほど固いトレンチコートを着ると、

何故か「探偵」に見える悲しい現実を発見して、へこんでいる。

これでもし中折れ帽なんかかぶった日には、

フィリップ・マーロウになる自信があるわ、

実際、宝塚に出ている男役程度の貫禄があったりして、

ひぃいぃいぃいぃ、、と声にならない叫びを上げたのでした。

そのあとはもうずっと自分が探偵になった気がして、

私を見る人はみんなが「あ、探偵」と思ってるんじゃないか、

ひょっとしたら仕事を持ち込まれるんじゃないか、

違うから、私、あなたの見ている私と違う人間だから

などと無駄に思考をめぐらし、

「たいそうお似合いですぅう」と勧めた店員を一瞬憎みそうになったが

よく考えたら店で見たときはそこまで「ザ・探偵」でもない。

確かあの時はワンピーススーツを着ていた。

しかし「探偵」のときは、ちょうど今期流行したふくらみのあるパンツで

それが妙に「探偵」感を出している、

つまりはこのパンツの上にトレンチを羽織るな、と言うことか、

確かめろよ、鏡の前で一回、な、おばはん、と大いに反省して、

探偵風にコートを前でしめ、春風に吹かれながら

しおしおと帰ってきたのでした。

背の高い女は年をとっても辛い。