ほんのメモ。「じいちゃんが語るワインの話 ブドウの年代記」

フレッド・ベルナール著・翻訳 田中裕子。
「アメ・コミ」より「バンドデシネ」のほうが私には読みやすいので、マイダーリンが買ったもので面白そうなものを時々読んでいる。
この本は「読めばブルゴーニュワインがわかる」そうで、日本のワイン漫画があちらでは人気のようだが、本家はどんなもんだろう、と、
ま、「絵」の質が違うな、「何とかのしずく」はどうも絵柄が好きになれなくてデキャンターにワインを入れる場面から進んでいない、
見ると「ムカッ」とする絵ってあるんだよな、定期的に繰り返し流される女性向け(?)攻略ゲームのCMのアニメみたいに。
それはともかく、黄色と緑にあふれる絵本のようなこの本は、ブルゴーニュワインの産地で生まれ育った著者が祖父にワインの話を聞く、
というスタイルで脱線しつつも最終的には「俺たちのブルゴーニュワイン、最高!」で、ほのぼのとまとめられている。
最初にじいちゃんがワインのあれこれを語ってくれるのは、私のようにワインに詳しくなりたいわけではなく、薀蓄を語ってくれる人の話を
「はぁはぁ」と聞くばかりのおばはんにはわかりやすくて大変いい。ワインエキスパートの人には物足りないかもしれないが。
「ワイン言葉で愛を語ろう」なんて、さすが「愛」の国、愛を思わせるさまざまな言葉がワインの名前に使われている。
「ビュリニー・モンラッシェ レ・ピュセル」なんて意味を知らなかったわ、割と気軽に適当な名前をつけるもんだな。
ワインの薀蓄も面白いが、ブルゴーニュ人のワインに対する姿勢も「生産者」であると同時に「消費者」である視線を失っていないのが
「生活に根ざしたワイン」という感じで好感が持てる。
とにかく著者のちょっと気難しいじいちゃんの愛すべき性格がとてもいい、孫と祖父の愛の物語でもあるのだな。
ブルゴーニュのブドウ畑の歴史も面白い、ドイツ軍の戦車に踏み潰されてしまったブドウ畑など、戦火は容赦なくワイン畑にも降りかかったようだ。
私がもっとも深刻に受け止めたのは「Dデイ」として知られるノルマンディー上陸作戦にて、多くのフランス人女性が米兵によって強姦の被害を受けたということ、
2000人もの女性が強姦罪で兵士たちを告訴したそうだ、告発しなかった女性はその何倍いるだろうか?戦場では必ずこの手の犯罪が平気で起こる。
「何が解放軍だ!」という怒りはどの国にもあることだろう、戦争は生活者への冒涜行為だ。
もっと気楽な話に戻して、私がはじめて知ったスペインの人気カクテル「カリモーチョ」とは、なんと赤ワインをコーラで割ったものだそう、
それを孫に「うまい」と聞かされたじいちゃんは当然、黙って席を立つ。私はじいちゃんの気持ちもわかるし、孫がうまい、という感覚もわかる。
一度やってみたいものだが、安いスペインワインで試そう、スペイン発の味だもの。
だらだら長くなったが、面白くてちょっと泣けるこの本は、フルカラーであるにもかかわらず、「1900円」とこの手の本にしては安くてお得。
先日読んだ「ロックアンドキー」なんて完結していないのに5000円近くしてたわ、、(涙)
というわけでお勧めなのでした。終わり。