拾い読み「皆殺し映画通信」柳下毅一郎

先日、私が風邪で苦しんでいるというのにマイダーリンが1日中寝室にこもりヘラヘラ一気読みしていた「皆殺し映画通信」、
「あ〜、人生の一日を無駄に使ってしまった」って、他人の悪口ばかりを集めたような本を読みふけってつやつやしてるってどうよ?
とは言うものの、私も聞いたことのある映画のタイトルだけを選んでめくってみた。
いやはや、ほんま、残念ながら、笑ってしまう。面白い。
「こんな映画、誰が見に行くんだ?」と不思議に思っていた映画って、柳下さんが見に行くのね、、、納得、って、
まあ、正直、そうとでも考えねば納得できないような、出ている俳優さんたちも「なんで俺がこんな映画?」的な感想を実は抱いているんじゃないか、
テレビドラマでも、これだけの良い俳優を集めてよくもまあここまで大失敗を、と思うような作品、あるものね、お仕事って、辛いわ、、(涙)
当然映画を見るのが「お仕事」である柳下さんも辛い。タイトルを読んだだけで、出ている俳優陣を見ただけで「終わった、、」
と思わずにはいられない、そしてほぼその予測は当たる、でも「お仕事」だから、やらねばならぬ、本当、大変よねぇ、性格も歪むわよねえ、、
と、つい書くように、私は柳下さんが好きではない。むしろ、嫌いなライターのひとりでもある。
なぜかといえば、わざわざ、子供向けに作られた映画であっても、容赦ない「大人」の目で、「大人」気なく叩くからである。
そして残念なことに、子供もその文章を読む可能性がこのネット社会ではあるわけで、
子供の成長のために幾分なりと必要なくだらない経験がその言葉のせいで歪められることを私は秘かに案じている。
子供は馬鹿なものでも、なんとなくこれもいいかも、と、ついのせられる経験も必要だと私は思っている、
「良いもの」だけを与えられて子供は育つわけにはいかない、は柳下さんだって知っているだろうに。
大人には馬鹿にされても、子供にはちょっといいかも、ってな映画作品を糞味噌に言うのはどうよ、世の中はオタク映画だけで成り立つわけではないからね。
でも、成人向けの「なんじゃ、こりゃー!」な映画は心置きなくお叩きください、
「すーちゃん、まいちゃん、さわ子さん」なんて映画、誰が見に行くんだ?と思っていたが、それが恐るべき「スールキートス王国」の陰謀(?)だと喝破されれば納得する、
「将来に漠たる不安を抱くアラサー女子たちの心を慰撫して、さらに領土を広げゆくスールキートス王国なのだった」と書かれたら、
とっくにアラサーなんて年は過ぎ去った、不安さえも「食べられるものじゃないならいらない」になったアラフィフババァでも
その映画の必要性がなんとなくわかるのだ、大したものだ。
ま、この映画評は、貶しているようであっても、見るべき点を抑えているので、柳下さんはやはり凡百の映画ライターとは違う。
私が面白いと思ったのが壇蜜さんの「私の奴隷になりなさい」評で、CSの映画チャンネルでやっていたのを見たんだが、
ちっとも「エロく」ないので、これは私が年寄りだからなのか、それともそういう「作り」なのか、
少なくとも「エロくない」理由が柳下さんのおかげで理解できたので、感謝。映画批評って、馬鹿にも映画が分かるように書いてくれるものなのね。
きいろいゾウ」だの「つやのよる」だの「脳男」「プラチナデータ」「図書館戦争」、こんな話だったのね、なーるほど、な
この本を読まなければとっくにタイトルさえ記憶の彼方に消え行く映画でも柳下さんのおかげで頭に残ったわ、ありがとう、柳下さん。
何より感謝するのは、制作されたのが不思議すぎる「草原の椅子」という映画が、あのようなストーリーであったと知ったこと、
いやー、47年生きてきて、これほどまでに知って無駄な知識を仕入れられたとは、本当、生きていて良かった、って感じ。(褒めてないな、いや、心の底から褒めてるんですけど)
というわけなので、知っている映画を拾い読むだけでも面白い「皆殺し映画通信」、お勧めです。
ところで、私がこの本の中で知っている映画は多く見積もって3分の一程度。
無駄な映画が作られているもんですなあ、、日本映画って実は「バブル」なのかな?
それをいちいち見に行く柳下さん、お仕事、ご苦労様です。