いいもの?わるいもの?

かなり昔に「子供に見せるアニメはジブリとディズニーだけ」と言いきられて面食らったことがある。
いわく、「他のアニメーションは下品だから見せる必要がない」「子供にはいいものだけを与えたい」
そうで、アンパンマンも、ドラえもんクレヨンしんちゃんも、その当時ははやってたセーラームーン
だめなんかー!と友達と二人で顔を見合わせた。色々こだわりのある人で、見せるアニメを限定しておけば
与えるおもちゃもおしゃれなインテリアにあうディズニーやジブリのもので統一できるんだそう、
それに日本のよくあるアニメは色合いが下卑ていて子供に与えるのには不向き、と、
まあ、確かにセーラームーン系列なんかは田舎の商店街の花飾り的なけばけばしさがあるわな、
その点ジブリやディズニーは色がきれいだ。
「子供にいいものだけを選んで与えるのが親のつとめ」と、とくとくと諭されて、
それに反論できないまま、今も実は釈然としない。
子供に「いいものだけ」を与えるって、これの何が悪い、と言われたら
私ははっきりと答えることが出来ない、それが「正論」だと思う。
ただ、私の考えでは、いろんなものを見せるのも必要、
で、「おたく」文化をこよなく愛するダーリンにその話をして、
当然「セーラームーンのどこが悪い!」と大いに盛り上がったのだった。
とか言いながらうちの子はセーラームーンよりカードキャプターさくらをこよなく愛していたので、
NHKご推奨品を見てたわけだ。
(これは実によくできたアニメでしたな、おかげで(?)うちの子は今でもCLAMP好き)
それはともかくも、私はこの「良い」「悪い」の基準を親がこうもはっきり示すことに
未だに抵抗を覚える。これが必要なことは知ってるし、たぶん私もやっていることだ、
だから反感を持ってしまうのか?とも考えたが、年月が経って、漠然とこれをしていた人の
おそらくは無意識の「選民意識」が私は嫌だったと感じている。
「下品なアニメなんか見せない」と言われたとき、「下品なアニメ」を子供と一緒になってみている
私たち「親」と「私」は「違うの!」と高らかに宣言されたことへのいらだち、
「見下された!」みたいな、確かに子供にねだられるままにはやってるアニメのグッズを
ひとつかふたつ買い与えたりして、ああ、好みじゃないわ、このアニメTシャツ、
戦隊ものはパジャマまでで押さえたいわよねえ、、(ため息)の私と友達の「だめ親」ぶりを
糾弾されちゃったような、でもそれって本当に悪いこと?と今も私は考える。
「おたく」のダーリンがそのときに言ったのは
「山ほどのクズを見て初めていいものがわかる、はじめからいいものしか与えないでいると
本当にその良さがわかるとは思えない」で、これに私は納得した。
また、日本のいろいろなアニメはすべてが「それなり」で、
でも「サザエさん」並みに生き残るようなものが数多くあるわけではない。
(そしてそれがいいとも限らない)
この淘汰の道を歩んでいくものを子供に一瞬見せるのも悪くない、と、ゆるゆる親の私は今も思う。
「良いものだけを子供に与えたい」親の気持ちは、こんなにも悲惨な世の中で、
家庭の中だけでは安全で「良い」ものを、と願う心だと理解できないワケじゃない。
どのみち、すさんだ世間で子供は必ずおかしなものに出会って拾って持って帰ってくる。
「良い」とか「悪い」とか、たぶん「悪い」も見せておかないと、
「悪い」の判断がつかないんじゃないか、そして「悪い」、を完全に拒否することが
この社会で可能かどうか、「悪い」とされたものとも適当につきあっていくすべを身につけることも
必要じゃないか、と思いつつも、「いいものだけを子供に与える親」という、
神々しいばかりの絶対的「善」に惹かれる気持ちを私は否めない。
「いいもの」だけを与えられた子供がどのように育つのか、私は転勤族だったのでそれを言った人とは
はつきあいがなく、また連絡を取り合うその当時の友人も私と「類友」的にそれを言う人に
反感を抱いていたので「あの人、今どうしてる?」と聞いても
「どこかでまだ生きてるんじゃない?へっ!」とまことにつれない。
(かの人は上の子と同級の男の子の母親で、うちは女の子だったのでそれほど親しくなかったが、
同じく男の子の母だった友達は、これ以外に「むか」が入るあれこれがいっぱいあったんで致し方ない)
その後の追跡調査のためにもいやがらずにおつきあいを続けておくべきだったかしら、なんてね。
この手のことを言った人を私は実はもう1人知っていて、これはなんと「男性」だった。
その非常に香ばしい人の話は別の機会に。
「腐っている」とわかっているものを小さな子供にそれと知って与えるのは論外だし、
また親がそれと気がつかずに与えるのも考えもの、ではある。
ただ「良いものだけを子供に与えたい」の考え方を
明確に肯定も否定できない自分自身を整理しておきたい。(続く、かな?)