「3秒間の死角」アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム

作者のアンデシュ・ルースルンドは元(現?)ジャーナリストの性か

取材先が豊富なようで、この作品も協力者を共著者としている。

共著者のベリエ・ヘルストレムは収監経験のある元犯罪者。

59歳でがんで亡くなっている。

この作品もまた「この・ミス」の何位かになったらしく、映画化もされたようだ。

臨場感あふれる叙述ミステリで、

考えてみれば、ルースルンドは巧みにこの手法をほかの作品でも使っている。

「技あり!」の出来栄えで、あっという仕掛けであった。

ので、書くとネタバレなので自粛。

これは「バディ」シリーズの一つで、

シリーズ主人公、グレーンス警部が存在するものの彼は添え物で

警察の潜入者「パウラ」の視点で描かれている。

この「パウラ」がどうなっていくのか、

読み手は良い家庭人でもある「パウラ」にすっかり感情移入してしまうので

ストーリーに振り回されっぱなしになる。

スウェーデン、だけではなく北欧、おそらく欧州全体の麻薬汚染率はひどいらしく

収監された囚人たちにすら麻薬が出回り一大マーケットとなっているようだ。

そのマーケットに国際情勢というか、

「そこを自分のマーケットにしたい!」「外資系」麻薬組織が絡んで、

「パウラ」が組織壊滅のために囚人となるのだけれど、

先日、ねほ・ぱほで話題になった女子刑務所の生活よりはるかにすさまじい

囚人生活で、怖い怖い、ちょっとやそっとの犯罪者は入れないほうが良い感じ。

現在、この続編を読んでいると、麻薬漬けになった子供を救おうと

私立の良い麻薬施設に預けたものの、そこでより激しい麻薬中毒者と親しくなり

むしろ悪くなった、なんて話が出てきて、

「入れるとより悪くなる」施設ってなあ、と地獄の先はより深い地獄、って感じ。

現実世界で日本では少年院やその手前の保護施設で更生する子供もいるし

刑務所で初めて「まともな生活」を知った、元収監者の話を聞いたこともある。

環境があまりに悪すぎてそれ以外の生活方法を知らない人間には

刑務所暮らしは「学び場」でもあるだろう。

実際、共作者のベリエ・ヘルストレムは立派に更生しているので

海外でも小説の世界よりはましなところもあるよう。

この作品は映画化されているようで、配信で探してみる予定。

おすすめ度、星は5つ。良いエンタメ作品。おわり。