ミステリ雑記、「コロンボ」

年末年始「ミステリチャンネル」が「コロンボ」を一挙放送して、タイトルだけ番組表で確認していると、ほぼ全部見ているな、
数年前にもミステリチャンネルで放映されて、そのとき大体見たような気がする。最新作は、見逃したが。
コロンボシリーズは、昭和40年代うまれの私の子供時代、NHKで吹き替えが放映されて、そのとき、祖母とともに見て
祖母が気に入り、私も子供ながらに「面白いなあ」と思った覚えがある。
その後、なぜか日テレ系の映画放映枠で流されるようになり、そのころは私はもう見ていなかった。80年代くらいか。
子供心に面白い記憶はあったが、内容はトンと忘れていたので、ダーリンに指摘されて古いシリーズから見て行くと、
確かに、ミステリドラマの最高峰、といわれるだけはある。製作されて半世紀近くになっても面白い。
パイロット版で製作された最初の作品では、コロンボはそれほど薄汚くもなく、どちらかといえば、犯人が主演だった。
その後回を追うに従ってコロンボはますます薄汚れて、最後のほうになると、よぼよぼも加わって、
さすがにこれはないんじゃないの、になり、このあたりからミステリとしても質が落ちているのでお勧めしない。
最初の10作ぐらいが、金字塔、と言うべきか。
私は特に「死者の身代金」が好きで、放映されていると、つい見たくなる、これは犯人が女性弁護士だ。
またこの女性が美しくて、情け容赦なくて、魅力的。
コロンボシリーズは、女性が犯人である場合、なぜかその女性に同情的だ。しかもコロンボが半ば魅了されている。
「死者の身代金」でも犯人である美人女性弁護士に魅了されている部分はあるが、この作品では相手に同情がない。
同情「パート」は被害者の娘に向けられているせいか。
私がこの作品に驚くのは犯人である有能な女性の恐るべき部分を余すことなく表現されていること。
犯人女性は弁護士としてのし上がるために病気の妻を抱え、心が弱った上級弁護士に近づき、
妻の死後、まもなく妻に納まり、まんまと仕事と名声を夫からせしめた。
母親を失って間もない、多感な年頃のじゃまな娘もスイスに追いやったりして、私生活運営も完璧だ。
しかしそれだけに夫から疎まれ、離婚されかけたので殺してしまう。
「誘拐された」と装って、その身代金を払うために義理の娘の信託財産にまで手をつける強欲さは圧巻だ。
私はこの女性が最も恐れたのが、なさぬ仲の娘だったのではないか、と考えている。
故に経済力を奪って未成年である娘を支配下に置こうとした、そのために財産を奪い取る計画も立てていた、
この恐るべき強欲さに、舌を巻く。かねがね思うが、度外れた強欲は常に憎悪を伴っている気がする。
両親を失った(しかも一人は自分が殺した)娘の資産まで奪いつくすなどと、
なかなか男性には出来ない犯罪であるなあ、なんて、このある種、女性特有の狡猾な犯罪にわたしは感嘆している。
緻密で完璧、ここまでの計画はなかなか男性には出来ないんじゃないか、なんて、
しかし、この理詰めの犯罪は、感情で暴かれる。
美貌、有能さ、情け容赦なさにおいて完璧な女性犯罪者が唯一持たなかった、理解できなかった「感情」に追い詰められる、
この最終場面は、何度見ても感動する。「つきがあなたに回ったのね」と、どこまでも感情のない犯人の反応にも。
コロンボ作品では女性に尊敬の念を持っているのが快く見られる理由のひとつか。
まだ見ていない人にはお勧めのシリーズだ。