とある記憶。

「電脳ポトラッチ」の野良猫さんのエントリを読んで、私はそれで野良猫さんはその犬を触りたかったの?と思った。
そんなころっと態度を変える奴の飼ってる犬をさわりたかった?私は嫌だなあ、絶対さわらない。
と言うより、私は元々犬が苦手、それに、大昔、野良猫さんと同じような経験があって、その顛末は全然違う。
子供の頃(小学3年生ぐらい)、遊んでいるところに何匹も犬を連れてくるおっさんがいて、犬好きの友達がよくさわりに行った。
おっさんは、ある時は子供を追い払い、ある時は機嫌良く犬を触らせ、
大人というのはどのみち都合のいいときしかいい顔をしないことを知っている田舎の子供達である私たちは
そのことを気にとめなかった。
私はその犬がやせていたり毛が抜けていたり汚くて臭かったので、無条件にいぬ好きの友達にどんなに勧められても
絶対触らなかった。友達は「おっさんは怖くないよ、家に遊びに行くとお菓子いっぱい出してくれるし」と、
おっさんが時に子供を追い払うので怖がっているものだと思いこんで言ってくれたが、それでも腹のところが茶色っぽく汚れて
どう見てもあれはうんちに違いない、とにらんでいた私はおっさんにも、犬にも絶対近寄らなかった。
おっさんの家には入れ替わり立ち替わり「女の子だけ」が入り浸っていたようだったが子供の私は気にもとめず、
また友達に誘われても行くことはしなかった、おっさんの家は行ってみたいと思うような家ではなく、
今思えばゴミ屋敷寸前のような状態だったように覚えている。
そういや、その当時の友達はおっさんのところに誘うのに、「泣いた赤鬼」の話を持ち出したなあ、
時々怒るからって、怖い人だと思うのは間違っている、「おっさんがかわいそう」と
でも私は犬が嫌いだったのでやはり行かなかった。
一度、夕暮れ時、1人でかえっているとき、犬を連れたおっさんとすれ違うことがあって、その時いきなり犬にほえかかられた。
私は驚いて無様に転んだ。「かわいそうに」とか何とか言いながら、おっさんは私に近づいてきた。
見上げるとおっさんは満面の笑顔だった、もう、うれしくてたまらない、そういう子供っぽい顔でもあったように思う。
犬が興奮状態ではぁはぁ息を吐きながら近づいてくるのが怖くて、私は1人で立ち上がって走って逃げた。
おっさんが後ろで何か叫んだように思ったが、とにかく怖くて、家に帰っても私は怖くて怖くてたまらなかった。
しばらく外で遊べなくなってしまった。
おっさんはそのうち姿を見せなくなり、かなり後になってから家に誘い込んだ女の子に「いたずら」をして、警察に捕まったと聞いた。
常習だったらしく、適当な犬を拾い集め、子供のいるところをうろうろして子供の気を引き、家に誘い込んで「いたずら」を行う、
ねらわれたのはおとなしそうな女の子達で、なにをされても黙っていそうな、我慢をしそうな子供、
私の友達は一度どこかを触らせてくれ、と言われて、それは嫌だ、と断ると
「おっさんは「犬を触らせてるんだから」っていう」と怒って話していたことがあった。
「嫌だ」と言えた子供はおっさんの家に行かないようになり、自分が連れて行った友達のことを忘れてしまう。
友達に誘われて、一度でも家に遊びに行って楽しかった子供は再びおっさんに誘われたらつい1人でも行ってしまうだろう、
被害にあった後でなにが起こったかわからず、ただ不安になって友達に話して
その話からだんだんと色々なことがわかっていったようだ。おかしいと思った親が色々調べて、警察に通報となった。
「でもまたすぐ出てきて別のところで同じことをやってる」と、私の祖母は言ったものだ、私もそう思う。
私の記憶の中では「犬にほえられて転んだ子供を笑った大人」だったおっさんの顔は今や脚色されて
「弱いものに力をふるえることを有頂天になって笑う変態」とすり込まれている。
まあ、犬嫌いでよかったかな?(ちがう)
触らないでよかったものもあると言うことで、野良猫さんは、その聡明さで知らずにくぐり抜けた危険があったかもしれない。
私は今でも犬は苦手だ。
なんだか昔の方が子供にとって危険だった気もするなあ、、、
「あれはなんだったんだろう」と思うようなことがまだいくつかある。