読書感想・「ミレニアム」3部作。

出版前に急死したスティーグ・ラーソンが残したオリジナルがこの3作。

同じキャラクターで別の作家があと3作書いているが、

版権をラーソンのパートナー女性と争った親族提供のようで、

長年ラーソンのパートナーであった女性がパソコン内に持つという

ラーソン構想の作品ではないよう。残念。

私は話題になった2009年スウェーデン制作版映画を先に見ていたので

主人公であるリスベット・サランデルがノオミ・ラパスで再生されて読みやすかった。

もう一人の主人公、ミカエルはなぜかダニエル・クレイグに変換されるこの不思議。

映画はスウェーデン版が素晴らしかったがミカエルが今一つ印象にない。

ノオミ・ラパスのカッコよさにやられっぱなし。彼女以上のリスベットはいない。

3部作は良くまとまっていて、一見主人公はジャーナリストであるミカエルだが

実際は謎めいた若い女性リスベットであり、

第一部は彼女の登場、第2部は彼女の闘争(逃走?)、第3部は彼女の解放、になる。

リスベットは恵まれた体格の人種である北欧内ではたぶん特殊な、

身長が150センチくらいの小柄な女性で、子供にしか見えない弱みと強みを持つ。

しかし強靭な精神と高い能力で自身の自由のために戦う、

作者のラーソンは女性差別問題に特に思い入れが深かったようで

女性が社会で懸命に自分の立場を切り開くさまをリスベット・サランデルに寄せて

描いているように思われる。

満身創痍になりながら立ち上がる、強さ、ひたむきさに心惹かれる人間は多いだろう。

作品の大成功はこの魅力的な女性主人公を創造したことにある。

作品は個人的好みがあるだろうが、第1作目の「ドラゴンタトゥーの女」が

一番面白く読める。スリリングな展開と思いがけない結末はミステリとして楽しい。

第2作はミステリというよりはアクションで、第3作はエスピオナージと法廷劇、

初めから映像化を考えて描かれたもののようだ。

長い割に読みやすいのは場面展開が早いので文章のまとまりが小さい。

長編を読みなれていない人にも読める。

かなり「エンタメ」な作品なので、読んだことはないものの、

一時期はやったシドニィ・シェルダンはこんな感じかとも思った。

1作だけ読むなら「ドラゴンタトゥーの女」、映画ならスウェーデン版、かな。

「ザ・クラウン」で若き日のエリザベス女王役をしたクレア・フォイ

作者がかわった第4作目である「蜘蛛の巣を払う女」でリスベットを演じている。

クレアは良い俳優でだれを演じてもそつがないものの、

ノオミ・ラパスのふつふつと小さな体に怒りをたぎらせた存在感の重さには

かなわない。配信サービスであればこちらをぜひ。おわり。