「ザ・クラウン」メモ。つづき。

クレア・フォイ版で印象に残ったのは

父親の母校に通わされたチャールズ皇太子の話。

父親であるフィリップ殿下が入学したときはまだ新設校で、

よく言えばワイルド、正直に言えば不具合極まりない、

そんな雑な学校に未来の国王の繊細な気質の幼いチャールズ皇太子

放り込まれてしまう。

母親である女王をはじめ、周囲は名門「イートン」を推し、

本人もイートンに行きたがったにもかかわらず、

父親は内気な息子に向かない学校であるのを認識しても意志を押し通す。

これが父親と息子の関係だとも考えられるんだろうが、

フィリップ殿下もさほどその学校でよい思いをしたわけではなさそうなのに、

「きっと気に入る!」と言い張るのはなぜか。

フィリップ殿下は革命で王国を失った王子なので

生まれた時から国王になる息子に複雑な思いを抱いていたのは本当なのかも。

とはいうものの、戦時中、軍人として活躍した父親が

戦後の恵まれた時代に育つ未来の国王である息子を強くしたい、

女の子のような内気さを捨ててもらいたいは、理解できなくもない。

残念ながら父親の目論見はことごとく裏目に出て、

幼いチャールズ皇太子に学校生活は過酷な日々でしかなかったようだ。

救われる部分はチャールズ皇太子につく護衛の男性が彼の繊細さを理解して

言葉にはしないものの批判的なまなざしを常にフィリップに送っている点で

父親の横暴に懸命に従う幼いチャールズ皇太子

本来は年長者と体力自慢のための學校アスレチック大会に父親の名誉のために参加し

案の定道に迷って、時間内で学校までたどり着けず行方知れずになった時、

護衛官はボロボロになったチャールズを回収し

フィリップのもとに連れて行き、黙ってにらむ。チャールズの肩を抱きしめて。

そのぬくもりをチャールズはどう受け止めたのか、

本来、父親が担うはずの役目を護衛官が果たしてくれたのは救いなのか、

あるいはこの上ない侮辱であったのか、下々の私にはわからない。

父親が息子を「君主」として育てなければならない、と思い込んだら、

子育ては迷走するものなのかも。

頼もしい護衛官や良く世話をしてくれる侍従がいて、チャールズは良かったね、と、

子供時代の不幸と言ってもその不幸を補う恵まれぶりは

やはり革命を経験した王国なき王族でかなり悲惨な生い立ちの父親ほど

不幸ではなかったのかも。

後年、チャールズ皇太子が自分が憧れたイートンでの教育を息子に施したところで

一人はともかく、もう一人は少々「アレ」な出来であったりするので、

どこで教育を受けようと結果ってもう決まっているのかも、と

おばはんは思ってしまったのでした。

父親が息子に施す教育は難しい。

ひるがえって母親が娘に施す教育はどうか、

エリザベス女王のアン王女への教育はこれから出るのかな。

現在、見ているオリヴィア・コールマン版でフィリップ殿下は

アン王女を「スィーティー」と呼んでいるのでかわいがって育てたよう。

しかし、アン王女もやや「、、、」な部分があるので

どう育てても、育つように育つのが人間ではないか、

チャールズ殿下もイートンに通えたからと言っても

結果は現在とさほど変わらなかったかも。

今、幸せそうなんで、それでよかったんじゃないかな。

恵まれた王族でも子供を育てる、学校を選ぶ、は難しいと思われた。

庶民とはレベルが違うけど。おわり。