「ザ・クラウン」メモ。

メリル・ストリープマーガレット・サッチャーを演じた映画で

エリザベス女王サッチャー氏がほぼ同じ年だと知って

その関係がどのように描かれるか興味があったので見始めた「ザ・クラウン」。

マーク・ライランス主演の「ウルフ・ホール」でアン・ブーリン役の

クレア・フォイが青春期のエリザベス女王を演じている。品が良くて美しい。

やっと中年期のオリヴィア・コールマンにたどり着いたので、

クレア・フォイ版で印象に残った回をメモ。

ジャクリーン・ケネディ訪問の回が面白かった。

演じるのは良く似せた女優さんでご本人よりやや甘めの美貌が

番組が彼女をどう描くか示しているようで興味深い。

アメリカン・アイドルの若く華やかなジャクリーンを

なかなか食えない「あざとい女」として描いているようだ。

彼女も女王とほぼ同世代で、アメリカという巨大国家の若き元首のさらに若き妻、

美貌を武器に人を魅了するのにためらいがないことで

地味に生きる女王にとって、最初から少々認めたくない存在として登場させ、

初めて出会ったとき、二人きりになる機会があり、

巧みなジャクリーンが内訳話をしてお互い大変ですわね、と

それで女王が懐柔されたと思ったら、

とんでもない食わせ物だった、のエピソードが挟まれ、

だまされてプライドを傷つけられた女王が思い切った行動をとるきっかけとなり、

その結果、ジャクリーンがかつての非礼に女王にひざを折りに来る。

そこでもまた女王は懐柔されたように見えて、

しかし、ダラスでのあの悲劇の折、夫の血が付いたスーツ姿のまま、

飛行機に乗り込む放心状態のようなジャクリーヌをテレビで見たとき

女王の母は「気の毒に、だれか着替えさせる人はいないの」と素直に同情するものの、

女王は「あれは「わざと」よ」と静かに言う。

このシーンで果たして女王はジャクリーヌを許したのか、

それとも和やかに会話を交わしつつ、決して許さなかったのか、

なんにしてもケネディ大統領暗殺後、

王族の逝去以外では鳴らさないウエストミンスター寺院の鐘を

ケネディ追悼のために異例の判断をして鐘を鳴らす。

あざといライバルの退場を見送るための弔意だったか、

このあたり、本当に女王はジャクリーンをどう思っていたか私にはわからない。

思うに、ジャクリーン夫人とは瞬時に相手のききたい言葉を見抜き、

上手に人を掌に載せて転がす天然の才能に恵まれた、

人付き合いのマジシャンのような存在だったかもしれない。

女王に対してのあまりの暴言は「実は私たちは、、」と打ち明けた、

あの内訳話は本当なのか、解釈が難しかった。

私は「血だらけのスーツを脱がないのは「わざと」よ」と

女王がみなしたと同じく、

ジャクリーン・ケネディとは洗練の極みまで行ったあざとさを持つ、

恐るべき女性であったと考えている。

本質的には内気で、高い地位にいるがゆえに孤独なまだ若い女性が

ほぼ同じような立場にいると思われる女性が「実は私も、、」と

こっそり内訳話をしてくれるのは「仲間」を見つけた、と

心安らぐ瞬間であったと思われる。

ジャクリーンは世界一有名な女性であるエリザベス女王

そのような社交術のわなを仕掛けるのにためらいがなかった、

やはりアメリカの大統領夫人とはなるべくしてなった存在なんだろう。

女王の同世代の描かれ方が面白かったのでサッチャー女史の回は楽しみだ。

エリザベス女王サッチャー、ほぼ同世代でありながら全く違う階層に生まれ、

しぶしぶ付き合うことになってしまった二人がどのように描かれるか、

ドキドキ、わくわく。

印象に残った回はもう一つ、明日に続く。(予定)