「非常時は、

悪人ほど元気である。」

が、9年前、東日本大震災直後に上京した私の感想。

上の娘の下宿探しで「放射能がぁ!」の時期に閑散とした東京に行って

感心したのがいい加減な不動産屋の兄ちゃんが生き生きしていたことで、

彼のおかげで、津波放射能だに負けてならない、と目が覚めた。

あの時期、正気を保っていたのはほぼ詐欺師連中ばかりで、よく考えてみると、

我が家でも育ちが悪いことにお墨付きかもらえる中学出身の私と娘二人は

今回の騒動に実はさほど恐れを感じない。

「手洗い、うがいは欠かさなければ良いのよね」

「においがしない、味もわからないって、かぜの症状と同じだね」と

まあ、幼児が家にいるわけでもないし、娘は二人とも気楽な独身だしな。

しかし、マイダーリンは職業柄か、今回の件に非常に心を痛めて、

上の娘に救援物資を早く送れ、たくさん送れ、と、普段にない取り乱しようで、

そういえばあの震災のときもこんなだったな、

マイダーリンは、私が上京するのも、もっと言えば娘が進学するのも恐れていた。

マイダーリンは私たちと違って幼稚園から国立大学附属校で

整然、静謐な環境で育ったので、混乱には弱いようだ。

私は今のこの迷走した状況が、私の育った激烈に悪い中学の状態に似ている気がして

物悲しさは感じるものの、懐かしさもある。

人間は混沌には必ず飽きる。しばらくは大混乱でもいつか秩序が生まれて

社会のありようがまた変わる。

そのときまで何とか生き延びようよ、とマイダーリンを励まそうと思うのでした。

上の娘からスーパーが空っぽと聞いて、もっと援助物資を送ろうかと聞くと

「たぶん来週あたりは、物も戻ると思う」と言うので、次々送るのは控えておく。

混沌たる非常時にあまり危機感を覚えないのは困ったものだと思うが、

具体的に手洗いをするとか、人ごみに行かないとか、そういう対応しか出来ないなら

鬱々とするのも馬鹿馬鹿しい。

コレラだとか麻疹だとか、人類がもっと弱かったときにも病は襲ってきて

そのときもなんだかんだで人類は生き延びているんだから、何とかなるだろう。

しかしウィルスの突然変異って、よく考えたらすごいよな、

「新人類誕生!」並みのドラマチックさがある。どこでどうやって突然現われたのか。

もとあったものが少し変わっただけでこうも劇的作用があるのにあらためて驚く。

と言う感想を育ちの悪いおばはんは抱いているのよ。

人間、いろんな場面に立ち会うものですな。

とりあえず、今元気に煽ったりしている連中は大体詐欺師で悪人、の理解で。

おわり。