読書録。

久々に伊藤比呂美を読んでいる。
この方には妊娠・出産のとき「良いおっぱい、悪いおっぱい」でお世話になった。
今でもあれは名著だと思っているので、出来ることなら娘たちが妊娠したときには
「ママが妊娠したとき、パパが買ってくれた本だよ」と勧めたいものだ。
えげつないほど妊娠の「あるある」を書いた本で、その後の育児本も続けて読んだ。
お嬢さんたちが思春期を迎え、難しくなったころまでは読んで
何かのエッセイで「良いおっぱい」時代のご夫君とは離婚されたのを知って、
たぶんそのことがあって、あまり読まなくなった気もする。
私も若かったので「なんだかなあ」と思ったんじゃないかな。
20年近くぶりに「ウマし」を読んで、
伊藤さんも親をお見送りになられて、夫(今の)婦二人きりになったんだなあ、
いつまでもこの方はわたしの人生の少し先を歩いているなあ、なんて勝手に思っている。
現在、アメリカ在住でユダヤ系英国人の年の離れたご夫君と
日本や世界を行ったりきたりする生活を送られているようで、
そんな生活の中での「食べるもの」へのまなざしは独特で面白い。
結構、偏食だったのね、伊藤さん。昔のエッセイでも書いてたっけ?
さすが詩人でいらっしゃるので、言葉のリズムも独特だ。
しかも、感覚が生々しく言葉で伝わって、うならされる。
「口の中で爆発が」
「(口の中で味が)ぱんと鳴って弾け飛んだ。」「弾け飛んで、口腔に乱れ散った」
なんて、詩人でなければなかなかかけませんな。
また、ひらがなと漢字の使い方のうまいことといったら、いちいち書き写したくなる。
読む側にその文字の形と、それを声にしたときの響と、様々なバランスをとって言葉が編まれている。
言葉を味わう楽しみと、独特の味覚をお持ちなので、食べたら本当にそんな気がするのか、
書いてあるもの全部を食べてみたくなった。
面白いので、一人・伊藤比呂美フェアを行うことにする。