雑談。

森鴎外が話題になっていて、これは亡くなった谷口ジローの代表作、「坊ちゃんの時代」への前ふりか。
好きだったわ、「坊ちゃんの時代」(涙)私はあそこに描かれている鴎外とエリスの物語が最も真実に近いと信じている。
森茉莉作品から父親である鴎外を拾い読むと、彼は「面食い」だったのだよね、あきらめきれぬ人ではなかったか。
故に、あのような作品になったと考えている。なにげに「明治の男」も女々しいのよ。
今とは考えられないほどの重圧の中、国家の未来のために必死になって海外で勉強した人間をそう責めるもんでもないよ、
妄想日記くらいつけさせてやれよ、、、
とか言って鴎外は軍医のトップとしてしてはならないことをしたので医療関係者の評価は低い。
確か「公衆衛生」に関わることで、間違った説を広めたんじゃなかったかな。
しかもそれが間違いであったことがわかってきても隠蔽に走った、彼の輝かしい「文学界」の評価がそのミスをかき消した、みたいな。
鴎外は、結構策士。しかも、やはりけつの穴が小さい系、故にのちのち子孫が苦労した。なんちゃって。
しかし、鴎外にしろ、漱石にしろ、あの時代に海外に出るとは、しかもそこで学ぶとは、本当に苦労が多かったと思う。
故に、鴎外は失敗が認められなかった、漱石は心を病んだ、身を削って来たのだよなあ。
意外に当時海外に渡った女性たちは、心を病むことなく、のんきにそのまま勉強し続けたり、年の離れた夫と仲良くやったり、
女のほうが心はかなり丈夫かも。ま、期待値が違ってただけか。
海外に出る、とは当時はかなりのエリートばかりであったが、その「お付き」の人間も一緒に出されたりしたので(鴎外、漱石にはいないが)
その「お付き」の人々のその後の人生は面白かっただろうと思う。歴史には残らないが、波乱万丈だったんじゃないかな。
私の義理の曽祖父という人がその手の人だったらしい。私の祖母の養父に当たる人で血のつながりはない。
祖母は大家の当主長男であった父親がなくなった後、母親とともに家を出され、
母親の里が資産をつけて、祖母の養父となる人のところへ親子ともども引き取らせた。
そうでもしないと、当時は商売を起こす資金は農家の五男には調達できなかったよう。
ま、昔はあまり今ほどこだわりがなかったので「結婚できて、お金も子供ついてきて、ラッキー」くらいの意識だったんじゃないかな。
その曽祖父がいろんな船に乗ってあちこちの海外に行ったことがあったらしい。もちろん、下働きで。
アメリカに行ったら「○ロンボ」と一緒に飯を食わされた!」とか、「バルチック艦隊を最初に見た日本人の一人」だとか、
どこまで本当かわからないが、後に割と本当らしかったことを知った。歴史には残らぬ下々が案外ちょこちょこしているものよ。
ま、勉強しなくていいし、国家も背負ってなかったので、仕事はきついかもしれないが、海外に出るのは楽しかったよう。
やはり、漱石や鴎外は、大変だったなあ、といまさらながら、考える。
彼らからはるか離れた気楽な下々のものの子孫は思うのでした。