ほんのめも・皆殺し映画通信・冥府魔道。

「皆殺し映画通信」第3弾。
先日移動中に読んでいて隣席の中年男性にドン引きされる装丁であったりして。
さすがにまがまがしいカバーははずしてたんだけどね、真っ黒で「冥府魔道!」とおしるしがある本を読む中年ババアは怖いか。
ま、私は何故か見ず知らずの人間によく話しかけられるタイプなので、無料で他人のおもてなしをしないで済んでよかったわ。
内容は、「現代映画界の闇、ご当地映画に迫る!」で、柳下先生、いよいよ、いって帰れぬ道へ、、(涙)
なんだかこういう「行って帰れぬ人」を見送った記憶が前にもあるわぁ、かつての中村うさぎ先生を見送った感覚だわぁ、
うさぎ先生にも「ついていけないけどがんばって!」と思ったわ、柳下先生もその道をたどるのかしら。
一定年齢になると、中高年ライターはこういう道に踏み外して(?)行くのかな、更年期の道はまさに「冥府魔道」。
さて、内容は「こんな映画、あったんかー!」の映画、山盛り。
「たこ焼きの詩」って、なんじゃそりゃ、「激安ジェネリック家電映画」と、どうやら今はやり(?)の「貧困」ご家庭もの。
何でもつくりゃーいいってものじゃー、、といいたくなるものの、柳下先生の評を読むにつれ、これはこれで「あり」かと言う気にも。
柳下先生の偉いところは、くそみそに書いていても「見てみようかな?」をそそること。
いったいドンだけ、とほほなんじゃー!とこの目で見てみようか、と言う気がしてくるのだよね。私は柳下さんと同じ感覚の持ち主ではないし。
とは言うものの、「平成合併○周年記念作品映画!」なんてのはどこで見られるものなのやら。
「ご当地もの」は「公金横領」の匂いがそこはかとなく漂う映画群ではあるものの、これもお上の「文化振興」のひとつか、と思ったり。
少なくとも、映画監督や俳優が仕事にありつけるしね。
こういう映画はやはり、公立小中学校の暗い体育館で生徒みんなに見せられるのかしら、、
私は途中で寝ることが多かったので、感想文を書くのに苦労したわ。あのころの「何とか啓発映画」より出来はいいのかね?
柳下先生が紹介しなければ、決してその存在を知ることはなかった「キンキン」こと愛川欽也の映画など、これは本当に「観たい!」と思わせる。
柳下さん、意外にじいちゃんが好きなのね、柳下さんは柄本明にも愛を注いでいるようで、なかなか渋い趣味を。
一方、柳下さんの「マエアツ」愛も熱い。「マエアツ」さんは、確かに映画的才能のある俳優さんだしね。その才能の方向は常に「あさって」だけど。
柳下先生御分類の「謎カフェ」映画も「スールキートス説」並みに「おひざ、ポン!」だったわ。
すばらしい。柳下さんを映画の分類学者として評したい。
柳下さんの本のいいところは、見たことのない映画の評でも楽しめ、
その映画をひょんなところで見てしまったところで再び読んで納得できる「一粒で二度美味しい」お買い得さだ。
先日、CSで「永遠のゼロ」をうっかり見てしまい「なんじゃこりゃー!」と悲鳴を上げ
柳下毅一郎を召喚じゃぁー!」と書庫に飛び込んで、映画通信の第1弾を読み返してしまったわ。
柳下先生の御説にて、それなりに納得。あれは破壊的な映画作品で、戦争経験のある私の実家母に見せた日には残り少ない生命を瞬時に奪いそうな、
それほどあほな作品で、作りがアホか、原作がアホか、教えて!柳下先生、となったとき、十分にお答えくださるので、よかったな。
いやおうなく時々「とほほ」な作品をごらんになる映画ファンの皆様、一家に必ず「皆殺し映画通信」を、とお勧めします。
「冥府魔道」に分け入っても、何とか帰ってこられそうな柳下先生、今後のご活躍を楽しみにしております。おわり。