読書感想・「東京どこに住む?」速水健朗

故郷喪失者による東京礼賛本。
なんて書くのはあんまりか。
何かと話題の「23区格差」の代わりにマイダーリンが買ってきた本で、
ダーリンいわく「東京で不動産を探すときの参考になればと思って」だが、その点では期待はずれ。著者は東京東部を推すことしか書いてないからね。
その「推す」理由が「食住一致」ともじり言葉で、最近新規参入の外食系産業が東京東部に進出しているようで、
そこがおしゃれで新しいから「住みやすい!」はず、とは、はて、フリーライターと言うのはお友達のために色々活躍するもんですな、
ところで、あんたどこに住んでんの?と聞きたくなった。「西高東低」の「西部」だったらクビ絞めんで。
「東京の地価は「西高東低」だ」とか「今は「食住一致」だ」とか、やたら奇妙なもじり・煽り文句が目立つものの、特に目新しいことが書いてあるわけではない。
東京からどのような人がどこに住み替えるか、は面白く読めたが、やはりありがちなパターンばかりで、そこが狙いなのかもしれないが、
最後に著者が何を言いたいのか、さっぱりわからない。
著者の父親が銀行勤務で転勤を繰り返してきたようだから、子供時代は彼も転校を続けてきたのかもしれない。
転勤族だった我が家でも物心ついてから何度か動いた上の子が自分が「どこに帰属するものか」の意識がやや淡い。
ずぶずぶの地方人とは相容れない感覚を持っているように思われる。
著者もそうではないか、故に「故郷喪失者」の多い東京、最高!ってことなんじゃないかな。
著者の言葉の裏にはうっすらとした地方蔑視がにじむ。
経済力をすべて東京頼みであるかのように(ま、実際そうなんだが)「地方はもうお荷物」といわんばかりの切り捨てっぷりは腹立たしい。
東京でしか生息できない阿呆どもを養うために地方出身の質実な労働力があることを忘れるなよ、
東京の単純作業熟達者の少なさに比べると地方がどれほど住みやすいか、あちらこちらに引っ越した私にはしみじみわかるわ。
引越し業者ひとつとっても東京のまどろっこしさには驚かされるわ、地方のその手の熟達者の技術力を見せたいわ!なんて、
あんまり本とは関係ないところでむかつく私、、とにかく、著者にとっては「東京、最高!」ってことらしい。
フリーライターにとっては東京はネタだらけだからね、人(=馬鹿)も多いのでだましやすいし。
ぼろかすに書く気はなかったが、ぼろかすになってしまったな、基本的にやはりぼやっとしたことしか書いてないんでな。
私は地方の人間なので、彼とは東京の見え方が違う、強固なようで案外隙のある町、としか見えなかったりする。
そのほころびから大きな瓦解の可能性も孕んだ町と思われるので、私は東京一極集中をあまり支持しない。
著者はかつて田中角栄が始めた地方分散を攻撃するが、それがなかった後の世界がばら色だったとは、到底思えない。
大都会の崩壊をやや緩めたんじゃないかな。
やはり「23区格差」を読もう、と思った。
この手のことはどんなにがんばってもぼやっとしか書けないようだから、いっそ思いっきりぼやっとしたことを書いてある本を読むに限る気がする。
著者の知人を見る限り、「食」が専門のライターのようなので彼の「ラーメンと愛国」を読んでみるかな。
琥珀先生がほめていたような気がするし。でも琥珀先生は好きだが、琥珀先生と私の映画の趣味はことごとく違うからなあ。
いやな予感しかしないわ、、(涙)
追記・今著者のツイッターをのぞいたところ「文京区」とあったので「五反田」に住んでるのではないらしい。一部分削除訂正。