ディケンズ雑談。

弁護士といえば「ディケンジアン」の第3回目に、「大いなる遺産」の登場人物で弁護士・ジャガーズ氏の共同経営者が「荒涼館」の弁護士・タルキングホーン氏とあって、うならされた。
「忌々しい共同経営者」とドアに掲げられたその名前だけが写される場面で、盛り上がるディケンズファンは日本にどのくらいいることか。
考えてみればディケンズの作品の中には弁護士がよく出てきている。この傾向は同時代作品ではどうなんだろう?
やはりディケンズは特異な大作家だとあらためて思うな。
ミステリチャンネル」で、「ディケンジアン」放映の前に「大いなる遺産」のテレビドラマが紹介され、
若いころの私には印象的ではなかったジャガーズ氏の存在感に驚かされた。
マイダーリンは「それは君の好きな「ポアロ」役のデヴィッド・スーシェがやってたからだろ」と言うのでそれもあるが、
私の若いころの印象ではジャガーズ氏は四角四面な血も涙もない事務屋で
要は、ジャガーズ氏が独断で、罪を犯した両親の下に生まれた幼い美しい子供を両親とその子供、双方にそれぞれが「死んだ」と知らせて別の人生を歩ませた、
それゆえに起こった悲劇を若い主人公がジャガーズ氏に詰め寄って責めるクライマックスで、
ジャガーズ氏が、放置すればその子供も両親と同じ悲劇を繰り返すことを見越した行為だと返す、
今の私が見れば「まことにごもっとも!」な理屈で、冷静であると同時に理性的な実務家であったと主人公ともども思い知らされて、
若かりしころの私は、なんと「物語」にひきづられていたかと感慨深い。
世の中のあらゆる辛酸を見尽くしてきたジャガーズ氏なりの「慈善」であったその温情がわからないほど、私も若かった、
主人公はジャガーズ氏の立派さをそこで悟るにもかかわらず、若いころの私は相変わらず「ひどいやつめ」と思って忘れていたという、
何たる「お馬鹿」であることか、わー、すごいわー、自分、むちゃくちゃ馬鹿ですごいわー、と感心してしまった。
大昔に読んだものを年をとって読み返すのは若いころの自分の幼さがしみじみわかって面白い。
それはともかく、かなり良心的な存在として描かれる弁護士ジャガーズに対して、今読み返してもまぎれもない悪人として描かれる弁護士タルキングホーンを「対」にするとは、
「ディケンジアン」侮りがたし!と思っているのでした。
ディケンズ作品に出てくる弁護士を集めて比較するのは面白そうなので、やってみよう。これが山ほどいるのよね、、、(涙)