ほんの感想。「他者という病」 中村うさぎ

うさぎ先生、生還直後(?)に新潮で執筆のまとめ。文春やテレビ番組での降板トラブルについても含まれる。
文章は硬め。昔読んで「ハテ?」となった「愚者の道」に似ている。
内容は「うーん」となるような、「文春」での連載打ち切りは残念だし、腹立たしいのもわかるんだけれど、
また仕事を頼んでくる可能性も無きにしもあらずだから、あんまりお怒りになってしまっては、後で困るんじゃないかなあ、などと考えたが
こういうことをかけるのがうさぎ先生のいいところかもしれない。
うさぎ先生、また仕事を頼まれたら、迷わず受けてね、などと余計なことを。
テレビ関係のことは、私はあまりよく知らないが、中に人が多く入ることなので、一概に美保じゅんさんを責めるわけにはいかないだろう。
それをうさぎさんもわかっているだろうが、やはり憤懣を書かずにはいられない、これも薬の影響か。
本として面白いかどうかといえば、微妙かなあ、実のところ「文春」が連載を打ち切った理由はわからなくもない。
文春連載は、私は最後まで楽しめたが、先にうさぎさんを好きだったマイダーリンは読まなくなっていた。
主に「オッサン」雑誌だものね、「オッサン」受けしなかったら連載の意味はないのかも。
私が最も面白く読めたのが「あとがき」だったりして。
「あとがき」の内容が生々しいのだよね、ご家族、ご夫婦との現実的なやり取りが克明に書かれていて、特にご両親との関係がすごい。
読んだ限り、うさぎ先生が育ったご家庭は良くも悪くも「昭和」の典型的な「中流」家庭で、
かなり「きちんとした」(と本人たちが思っていそうな)ご両親の可愛い一人娘としての「役割」をうさぎさんは押し付けられてきたような気がした。
うさぎさんのご両親、「普通」の人たちなんだが、かなり怖い。
ひとり娘が瀕死の状態なのに、死んだあとの算段をする実の父とはめっちゃ、怖い。
悲しみを押し込むたちなのか、あるいは年をとって感情をなくしたか。
娘が死に掛けているのに、介護をしているその配偶者に「家賃」の事を聞けるとは、その発想が「凡人」にはないね、愕然とした。
私はうさぎ先生より10才年下になるが、こういう「昭和」の「上品」なご家庭の雰囲気はわかる気がする。恐ろしく排他的なのだよね。
こういう家庭の同級生っていたなあ、
決まりきった型の中からはみ出たものは容赦なく排除する、たとえば、私のように母親が仕事を持っている家庭の子供は
「しつけが行き届いてないから遊んではいかん」みたいな、それでうまく育つ子供もいれば、うさぎさんほどではなくとも、はじける子供もいたり、いろいろ。
私のような「共働き・欠損家庭」(と、昭和当時はそれが当然の「レッテル」だったのだよ)に育つ子供は差別をされるのが当たり前!な扱いをよく受けたわ。
まあ、私も野放図な子供だったんだが。
なんにせよ、悪い意味での「ど昭和」な感覚のご両親の元にうさぎさんが育ったのはすごい、
と、本の要旨はそこじゃないだろ!だけが、私に残ったのでした。
とりあえず、うさぎさん、がんばれ、でした。あとがきを読むだけでも、価値のある本でした。終わり。