高倉健映画感想「単騎、千里を走る」

一言にするとチャン・イーモウ監督の「オレの健さん、マジ・リスペクト!」映画。
高倉健」でなければ絶対成り立たない映画だよなあ、中国人が突然やってきた見ず知らずの日本人じいさんにここまで親切にするかどうか、
それが「健さんだから」で納得してしまう、実際、そういう映像なんですわ、「健さん」だから説得力がある。
内容というのが健さん映画にありがちな「不器用ですから」親子関係がうまくいっていない、
(しかし、健さんは映画中でも、何故か「子孫」を残せないのね、この映画でも、一人息子に子供はいないっぽかった)
で、死の淵にいる疎遠な一人息子のために中国に旅立つという、結局その息子の死に目にも会えない、誠に「とほほ」な話ではあるもの、
そこはやはり「健さん、だから」で涙を誘う。
結論から言えば、割といい映画でした、もうストーリーが破綻しようがどうしようがやはり「健さん、だから」で許せてしまう、
実際、広大な中国の映像を見ていると、なんかどーでもいいや、健さんもいい感じだし、と思わせる。
そして現地の素人中国人俳優さんたちのおおらかさが魅力的なんだよな、「健さん健さんを大好きな中国の仲間たち」みたいな。
見ていてふと思ったのが、かつて「大東亜・なんとか!」のお題目を唱えながらわけのわからん日本人がやってきて、でも特に何ができるわけでもなく去った、
ごく一般的な中国人は大真面目な日本人の侵略をそんなふうに見てたんじゃなかろうか、
映画でも、この頑固なじいさんは何がしたいのか、実は本人にもよくわかってないようだがとにかくわけのわからない要求をして、
それがあまりに切実そうなので、とりあえず協力してしまう中国人、
大陸人的だな、中国の広大な大地は人間のこだわりを小さく見せるが故に、そのこだわりを受け入れてしまうのだな、などと、
ホンマに「健さん」、空回りの不器用ばかりを振り回しているだけなんだよ、刑務所に入っている男の息子は連れてこられず、
そしてその男の映像は息子には必要ともされず、「骨折り損のくたびれ儲け」な、
とは言うものの、死の床にある息子との和解は手に入れられたのだから、意味がなくはなかったな。
そしてかたくなな息子のかつての姿と重なる孤独な中国の少年とのふれあいが「健さん」の癒しになったんだから、ま、いいかな。
しかし、私は要所要所で、自分の要求が飲まれない時に黙りこくる爺さん健さんに微妙に「イラっ」としたのでした。
この年代のじいちゃんは、こういうことするわぁ、聞こえないふりするわぁ、とその年代の親を持つ私の左脇をえぐったのでした。
健さん映画としては異色で面白い映画に思ったので、おすすめ。中国の映像がとても綺麗です。