「スクールボーイ閣下」読了。

やはり「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」の方が完成度が高い。
「スクールボーイ閣下」の方はロマンチック濃度があまりに高くて途中で辟易としてくる、先がだいたい読めてくるのも、どうも。
ロマンチックは控えめにしたほうが娯楽小説は格調高くなるなあ、
ほんのり風味付け程度に香らせる程度で止めておけばいいものを、こうも甘甘な男を頻発させるといくら「優秀な存在」としても「ほんまか?」と疑いたくなる。
そうでなくてもスマイリーそのものも相当ロマンチックな存在というのに。
わかりやすくロマンスの塊といえば1作目ではややふてくされていたピーター・ギラムが十分役割を果たすというのに(お色気担当)
女で崩れる存在はそんなに男にとって魅力的か、
私は暇になったりじれたりすると、気を紛らわせるために好きな女のことを考えるというピーターくんに一票、甘さはその程度でいいのよ、、
まあ、でも70年代の香港を中心としたアジアの状況が少し理解できて面白かった。
ベトナム撤退に対してアメリカン人将校が英国人に言うセリフ
アメリカ合衆国はたった今、君の国が会長であり最古参のメンバーであるところの、二流国クラブに加盟を申し込んだんだ。さあ握手!」とは、
この傲慢ぶりに惚れるな、世界の覇者は言ってくれることが違うねえ。
また、アジア暮らしが長くて、自分を形作る価値観、欧米の感覚を失う人間たちも描かれる、そして長く住めば住むほど痛烈に理解するのが
自分たちが見下している人種に自分たちも見下されているという事実。
麗しく繊細なアジアで、どれほど自分たちが野蛮な人種であるか、それを感じ取る敏感さが少し悲しい。
で、「スマイリーと仲間たち」を読み始めたものの、「ティンカー」を超える予感はないなあ。
しみじみ、私はロマンチックな存在ではないのだなあ、大昔から、見た目は大甘と言われてきたが、そのせいもあって身も蓋もなくしたか。
というようなことを考えさせる大作でした。ハリウッド映画にするのにはいい作品だと思った、おしまい。