夏の読書案内。(その3)

現在、「マウス」を読み返して年をとってくると見えてくるものが違うのぉーと感心している。
数年前読み返した時は、子供として年をとった親を見る苦労に同調したが現在は、やや親として子供に理解してもらえない寂しさが見える気がしている。
数年置きに、好きな作品を読み返して感想を綴るのもいいかもしれない。それが本当の「自分の記録」になるような気がする。
私には今は読み返せない本がある。
かつて、この日記でもその感想を無邪気に綴ったことがあるのだが、その後再び手に取ったとき、憤怒の発作に襲われて読み続けられなかった作品だ。
とは言うものの、これが「漫画文学」と思うので、上げておく。
吾妻ひでおの「失踪日記」。
「腐ったりんごは暖かい」が妙にリアルで美しい、とはじめて読んだとき感動したが、数年のち、自分の父親が彼と同じ病になり、散々振り回された経験をすると
とてもでないが牧歌的なその感覚が許せなくなる。アルコール依存症患者の家族に、あの作品はきつい。
本人には「こう見えている世界」が必ずしも正確とは限らない、その周囲にどう見えているか、だからどうした、といわれるだろうが、
心病んだ人間の見える世界は自分の感覚だけが頼りで、それゆえに周りを傷つける。
とは言うものの、作品自体は見事なので、とりあえず勧めておく。ただ、家族に依存症患者がいる人は要注意。
読書案内はマイダーリンの影響で漫画ばかりなので、次は小説に。