と言ってミステリしか読んでいないが。
ヴァランダーシリーズの翻訳家、柳沢由美子氏がアイスランドミステリシリーズを
紹介していたので邦訳されているものはとりあえずすべて読んだ。
「アーナルデュル・インドリダソン」作品で
アイスランドでは知らない人のいない有名作家の息子が書いたシリーズは
なかなか面白かった。
ヴァランダーシリーズ同様、探偵=警察官のキャラクター造形がお見事。
スウェーデンから始まってアイスランドといったん北上してみたものの、
最近は急激に南下してドイツの「フェルディナンド・フォン・シーラッハ」を
読み始め、これも邦訳分はすべて既読。
シーラッハは、私はミステリチャンネルで一時期テレビドラマ化されたものを
しきりに宣伝していたので見てみたが、かなり胸糞なので視聴中止。
原作に忠実に作るとそうなるわな、ってな、
原作は「文字」だから良いんだな、なんて感想を持つ。
長くても中編程度で、私は昔から海外の短編シリーズを好んで読んできたので
シーラッハは良かった。短いながらもスパイスの利いた読後感は
私の好きなサキを思い出させる。ミステリと言うよりは読み物であった。
ただシーラッハは、中編以上はかけない人ではないかの感触があって
映画化もされている「コリーニ事件」は面白かったが、「禁忌」はいまいちだった。
好みの問題か。長くなると最後のどんでん返しのようなトリッキーさがやや甘くなる。
ミステリと言うよりは読み物なのはアイスランドのインドリダソンのシリーズもそうで
「冬の長い長い夜にまるで念仏を唱えるように年寄りが子供につぶやくお話」のような
するするさらさらと展開していくのはどこか「ものがたり」のような、
「フーダニット!」と解いていく感じではない。これはこれで味わい深い。
言葉で楽しむ方が映像化されるより良いと思うのはこの二人の作家共通か。
シーラッハを翻訳されているのは酒寄進一氏、
最近、翻訳家の名前で作品を選ぶ、の方法をアマゾンの書評欄で知って、
今は酒寄氏が翻訳しているアンドレアス・フェーアの「弁護士アイゼンベルク」を
読んでいる。
海外ミステリの場合「翻訳家で選ぶ!」はなかなか当たり。
今のところ柳沢氏の「インドリダソン」も良かった。
ヘレンハルメ美穂氏の「ルースルンド」作品も当たりだったし。
ドイツに急激に南下したのはなんだかんだで北欧とドイツは近い、
ヘニング・マンケルの「クルト・ヴァランダー」もドイツ系移民を意味する名前だし、
日本で思っているより欧州の関係は複雑怪奇であるとよくわかるので
一人「ミステリ紀行」祭りをしている。こんな楽しみがあるのも翻訳のおかげ。
とりあえず、翻訳家さん、ありがとう、と感謝の念をここから。おわり。