「アナザーカントリー」・雑感。

ウィキペディアによるとこの映画は1984年製作、元は舞台で、

両方とも主演はルパート・エヴァレット、彼を売り出すための作品だったよう。

昨日はこの映画の背景を理解してみた日本女子がどの程度いたか、と書いたが

考えてみれば、お耽美するためのドラマなのでそういう知識は必要ないのかも。

いまだ、映像の中のルパートはけだるく美しい。

私は若かりし頃、彼の魅力がさっぱりわからなくて実は今もそうなんだが、

やはり退廃を体現するその存在感は圧倒的だ。映像に残すべき人だろう。

彼の日本語のウィキペディアでは略歴はさらっとしか触れていないが

英語版によるとかなり複雑な青春時代を送ったようで、

舞台で脚光を浴びるまですさんだ生活をしていたらしい。

しかし、育ちがよいためおそらく上流階級の英語を話す。

故の抜擢だったか、ルパートなしにこの作品は名作にはならなかったと思われる。

英国のエリートを養成するパブリックスクールの中でも名門中の名門である

イートン校で寮生活を送る、とびきり恵まれた10代後半の若者たちは、

将来が約束されているがゆえに日常が物憂くみえている。

退屈で環境に甘やかされている幸福な日々が映画の中で余すことなく描かれる。

これだけでも恵まれない青春時代を送るほとんどの凡人の心をとらえる。

現在も大活躍中のコリン・ファースも昔から変わることなくコリン・ファース

魅力的だ。そのうえ、出てくる面々が驚くほど全員美しい。

確かに日本でもエリートは容姿にも恵まれているわ、、(涙)

そういえば、この作品は日本では「おしゃれ映画」としても有名であった。

制服の着こなし方、着崩し方、

すべて恵まれた容姿をもとに基本を押さえたうえでの上手な演出で、

これを当時の日本人がまねようったって、できるもんじゃない、

それがわからない程度に幸福だったのね、日本人。バブルだったしね。

現在、おばはんになった私の目でこのファッションを見ると、

寮生である彼らの就寝前のガウン姿が可愛らしく、ウールの質の良さが光る。

日本ではこの手のぜいたく品は一般化されなかったな。

私は彼らがゆるっと羽織っているウールの薄いガウンが欲しいわ。

というような割とどうでもよいようなところに目が行って、

内容的には30年前と変わらず1930年代のエリートの繊細な心情は私にはわからない。

ただ彼らの親世代となった私には、主人公が当然のものと信じていた境遇が

簡単に自分のしでかしたことで取り上げられてしまう。

その仕打ちへの理不尽な怒りがやはり「青春」なのだなあ、

エリート校で最優秀層を意味するきらびやかなベストを身に着ける「権利」が

奪われたことで身も世もなく泣いてしまう、

若かった頃の私は「ヤンキーかっ!」と

その価値観が意外に日本のあほなヤンキー層の

「制服の裏地に〇〇を縫い込む」のような共通項を見出してあきれたものだったが、

今は哀れに思う。なんだかんだ人間は狭い価値観の中で生きていくものよね。

あと、主人公が未亡人である母親に大切にされ、また大切にする愛情深さに

ぐっと来た。私も息子が欲しかったかも。

しかしイケてるベストが着られないからと言って反体制に走られては困るな。

ま、本質的にはそんな話でもないが。という感想を持ったのでした。おわり。