映画感想。「バイス」

つづりが「VICE」なので「ヴァイス」かと思ったら日本では何故か「バイス」。

悪名高きブッシュ・息子大統領の副大統領だったディック・チェイニーのお話。

ちなみに「チェイニー」も綴りは「CHENEY」なのに

「チーニー」ではなく「チェイニー」とアメリカ東部では発音するらしい。

主人公は太ったりやせたりが激しいのが心配なクリスチャン・ベール

私は「太陽の帝国」時代の彼の美少年ぶりを覚えているので

長じてからの破天荒をひそかに悲しんでいる。

マイダーリンはこの人をいつも「太ったバットマン」と呼ぶが

今回も激しく太って本人の容貌に近づけている。

存命の人物によく似せているのはこの映画に出ている俳優全体がそうなので

その点でだけでも「金がかかってんなー」って感じ。特殊メイクの技術がすごい。

年をとってからの手のしみの再現具合なんかを見ると

クリスチャン・ベールをわざわざ使わなくても良いんじゃない?とまで思ってしまう。

何故、アメリカは年寄り俳優に若い役をさせたり、(アイリッシュマンとかな)

さほどの年でもない俳優をわざわざ老け込ませたりするんだろう。変だわ。

映画の内容はチェイニー氏とブッシュ息子連中がろくでなしで

イラク戦争は間違いだっ、の定石どおりではあるんだけれど、

この息子ブッシュがなんとも可愛い。

「愛すべきろくでなし」ぶりがむしろ「可憐」にまで至っている。

映画の中でとことん「馬鹿殿」ぶりをひけらかして憎めない。

そこにいるだけで癒される「馬鹿」であるのは政治家に必須の才能ではないか、

などと、どの国でも、もう馬鹿しか政治家になりたがらない時代よ、、、

せめて愛らしい馬鹿を選びましょうよ、と思ってしまうわ。

クリスチャン・ベールの相変わらずの熱演より、

私はこの(頭の)軽い役をしたサム・ロックウェルが気に入った。

この役でオスカーノミネートだったらしい。納得だ。

存命の人物を赤裸々に描くのは難しいせいかチェイニー氏を辛らつに描いていない。

私は共和党であっても実の娘がレズビアンであることを受け入れたエピソードは

「親子」関係を大切にしている「共和党」らしいもんだと感心した。

アメリカ人がどう見るかわからないがひたすら

「娘、可愛い、可愛い」で通すお父さんぶりには泣ける。

と言っても、もう一人の娘が選挙に出たとき、

彼女は自分の姉妹を選挙のため否定する行動をとったので

姉妹仲は現在、よろしくないらしい。まあ、そうなるわな。

映画の構造が面白く、

私たち夫婦が最近見た映画に立て続けに出演していた

マット・デイモン」そっくりさんの ジェシー・プレモンスが語り手だった。

この人は「普通のアメリカ人」を現すよう。

なんとなくさえない感じが私にはぐっと来る。良い俳優さんだ。

キルスティン・ダンストの夫らしい。

映画の内容とは関係ないがチェイニー氏がお金持ちになって住む家が

ラルフローレンの世界観っぽくて美しかった。

一族で集まって食事をするシーンなどは「これぞ、理想のアメリカ!」って感じ。

お勧め度は☆4かな。おわり。