ほんのめも。

「毒婦」北原みのり 

「毒婦たち 東電OLと木嶋佳苗のあいだ」上野千鶴子 信田さよ子 北原みのり

木嶋被告(死刑囚?)が数ヶ月前に雑誌の編集者と3度目の結婚をしたと読んで

借りてみた。

相変わらず、北原みのりが私にはきつい。

対談集を一緒に借りて読んで、思い込み激しく暴走する場面が多く、

上野千鶴子さんでも統制が取れない感じ、

上野さんは偉いなあ、この手の人を何十年も何十人も相手にしている。

今はどうなったか知らないが、この時期北原氏はハン流ファンだったよう。

ハンリュウ自体に問題はないだろうが、何かにつけその話を出すのでは、

この人、何がしたいの、って感じ。

それから私は圧倒的被害者だった東電OLを木嶋佳苗のような加害者と

同列に語るのは冒涜行為だとみなしているので、いらだつ。

平行して述べるなら、木嶋佳苗の犠牲者になった人間の孤独と

東電OLとしか名前を残さない、いまだ仕事の肩書きから逃れられない女性の

悲劇的孤独を同じものとして述べるべきだろう。

北原みのりに彼ら、彼女の孤独は理解できない。

元々彼女にその手の感情はないんだろう。

対談集はそれがよくわかる内容だった。

どちらの本もただひたすら北原みのり氏が自分の思い込みを暴走させ

押し付ける内容が多く、辟易とする。

しかし、いくつか見るべき点もあって、木嶋佳苗の被害者になった男性が

いずれも小柄であったようなことの指摘は鋭い。

知り合えるサイトでは身長体重を書く欄があったらしく

それで被害者は選ばれたのではないか、

「手ごろさ」で選別されていたかもしれないと、

つまり、睡眠薬などの薬の利きが悪く朦朧としてあらぬ動きをされたとき

自分ひとりで対応できる程度の体の大きさの人間ばかりを狙った、

木嶋佳苗は北海道出身者で出生地の別海は酪農地域なので

なんとなく動物を狙って屠る感じがあるなあ、と私は思った。

犠牲者は「獲物」だったか、人を「狩る」様な感覚だったか、

元々人を人とも思っていなかったか、

たぶんいつまでもこの事件は完全に理解されないだろう。

何故、こんなことをするようになったか、

木嶋佳苗の精神的原因を中学、高校時代に、他家から通帳を持ち出し、

金を引き出した事件を取り上げ、内田春菊はその事件をひょっとしたら、

木嶋佳苗はその家の人間に子供時代から性的暴行を繰り返され

大人になって報酬として金を持ち出したのではないか、

とマンガにしているそうで\その指摘は一瞬説得力を感じるが、確証はない。

私は佐野眞一氏の「別海から来た女」を読んだので

事件のことは知っていたが同じ家で繰り返されたとは知らなかった。

確かに妙な話ではある。繰り返された事件が内密に収められたことも含めて。

木嶋佳苗は小学生時代に性的な事件に巻き込まれていたような記述もあるので

そこは気の毒には思う。しかし犯罪行為とはまた別問題だ。

北原氏はやたらと男性への憎悪を語りたがって、「毒婦」ではそれが雑音になる。

しかし、もし木嶋佳苗が知り合ってまだ日の浅い人間に何故、憎悪をもったかを

金銭で考えたとしたら、彼女が次々に手をかけた被害者は

もうそれ以上の金額を彼女に出さないだろう、

たとえば500万近くをぽんと彼女に出した千代田区在住男性などは

その値段が彼が彼女に出す限度額であることに

恐ろしいまでの憎悪と絶望があったんじゃないか、

確かにほんの数回接触を持った相手からあっさり十万単位の金を引き出す手口は

鮮やかだが、夜の世界の女性たちの中には、もちろん最高額だろうが、

一晩に億単位の金を集めることも出来るらしい。

夜の世界に一瞬でもいた彼女はそのことを目の当たりにはしなかったか、

「この私にたった数百万」の感覚を持っていたのではないか、

不審死が疑われる、彼女が20代のうちに接触を持った男性は

数千万のお金を彼女に渡したとされ、

それに比べれば、30代になって言い方は悪いが

彼女にとってはしょぼい額しか稼げなくなった、

そのことが相手への憎悪につながらなかったか、と思う。

それから佐野真一氏の著作にも、この本にもほとんど触れられていないのが

密接に接触をもっていた彼女の下の兄弟たち、

私は彼女が何をしてもゆるぎない自信に満ち溢れているのは、

彼女が自分の兄弟を立派に養った、の自負があるからなんじゃないか、

それほどの恩恵を彼女の兄弟は受けた気が私にはする。

お高いホテルのランチだの温泉旅行だのを兄弟を連れて行くって、

兄弟はその金がどこから出ているか、気にはならなかったか、

気にならなかったなら、彼女の兄弟もまた異常だと私には思える。

木嶋佳苗の兄弟の配偶者が警察関係者だという噂が一瞬ネットにあったが、

今は見当たらない。

彼女の分け前にありついたであろう兄弟たちの情報が

ネットにすら見つけられないのは、非常に不可思議だ。

不可思議な事件は不可思議な人間の取材と判断だけに

ゆだねられるべきではないだろう。

出来ればもう少しまともな感覚の人間に全容を解明して欲しい。

事件に興味のある人なら読んでもよい本だが、特に薦めない。